こんにちは。
先日Twitterで鉄工用ドリルを木工用ドリル(ブラッドポイント)にする方法を知りたい人はリツイート・いいねしてくださいと投稿してみたところ、反応がありましたので、記事にまとめておこうとおもいます^^
鉄鋼用ドリルから木工用のブラッドポイントに研ぐ方法知りたい人、どれくらいいますか?
知りたい人、リツイートで拡散してください。
写真の左から右にの形状になります。 pic.twitter.com/SRxCGVhxpW
— 和田 賢治 @ TSUBAKI LAB Inc. (@simplife_plus) November 28, 2018
目次
- 1 ドリルの形状が違う理由とその結果
- 2 なぜ鉄工用ドリルから木工用に変える必要があるのか?
- 3 木工用ドリル(ブラッドポイント)に研ぎなおす方法
- 4 冶具の角度やツールレストの角度の意味は?
- 5 まとめ
- 6 その他の木工機械に関する記事
- 6.0.0.1 手順を図解で徹底解説!これが基本の自動かんな盤の調整方法
- 6.0.0.2 底が平らな穴を掘る!プロが絶対おすすめなフォスナービット(ボアビット・座ぐりドリル)を教えます。
- 6.0.0.3 これはすごい!横切り盤のメンテナンスで潤滑剤「ベルハンマー」を使ったら、見違えるほどスムーズになりました!
- 6.0.0.4 昇降盤のアライメント調整を行いました。
- 6.0.0.5 木工集塵機をバグフィルター仕様に集塵力 大幅UP!タコクロスにしたらほんとにすごい吸うようになりました!
- 6.0.0.6 横切り盤のメンテナンス:定盤を外して、丸鋸の昇降時のガクンガクンとなるのを直しました。
- 6.0.0.7 昇降盤、横切り盤のVベルトをFenner Drivesのリンクベルト(Power Twist Plus)に交換しました。
ドリルの形状が違う理由とその結果
通常、ホームセンターでも鉄工用ドリル、木工用ドリルというようにそれぞれ用途に分けて売られています。
その違いは、先端の形状にあります。
鉄工用ドリルはこれ↓
木工用ドリルはこれ↓
鉄工用ドリルは中心(先端)が当たり、そこから周りに円を広げていく形状になっています。
一方、木工用ドリルは中心があたり、次に穴の縁(円周)が欠き切られ、そこから内部が彫られているようになっています。
ちなみに、木工用ドリルの形状をブラッドポイントと呼びます。Brad Point。Bradというのは英語で「くぎ」という意味があります。つまりBrad Pointは釘の先端のような形状という意味ですね。
この形状の違いは、金属はどこを掘っても質は一緒なのに対し、木材は場所によって硬さなど違いがあることと木繊維の方向があるので、芯を一点決めてから、繊維を断ち切るように円周を切っていく必要があるからです。
鉄工用ドリルでも木に穴をあけることができる
では、木に穴をあけるとき、必ず木工用じゃないとだめなのか、と言われればそうでもありません。鉄工用ドリルでも木に穴をあけることはできます。
実際あけてみたのがこちら↓
(ボール盤を使って穴あけしています)
よく見てみると、穴のふちにバリが出ているのがわかりますね。一番左は穴をあける際にハンドルを早く動かしたとき。右はゆっくり動かしたとき。バリの量が違いますが、ゆっくり穴あけしてもバリが出ます。
一方、木工用ドリルで穴をあけるとこうなります↓
同じように左が早く動かしたとき。右がゆっくり穴あけをしたとき。
バリが最小限に抑えられています。しっかり縁の繊維を断ち切りながら穴を掘っているので、きれいな穴が開きます。
鉄工用ドリルで木に穴をあけることはできますが、バリが出やすいのです。バリが出てもいい場合やバリを取り除く作業をいとわない場合は、鉄工用ドリルでもいいでしょう。でも木工作品としてバリを出しちゃいけない場合、バリを取り除く作業をしたくない場合は、木工用ドリルを使うことが望ましいのです。
なぜ鉄工用ドリルから木工用に変える必要があるのか?
木に穴をあける場合、鉄工用ドリルでも穴をあけることはできるが、木工用ドリルを使えばバリを最小限にできることがわかりました。
それでは、木工用ドリルを買えばいいじゃないか、わざわざ鉄工用ドリルを木工用ドリルに研ぎなおす必要なんてないじゃないか、と思いますよね。
実は、木工用ドリルを0.1mm単位で揃えることはできません。ホームセンターなどでは、木工用ドリルのセットがよく売られていますが、0.5mm単位のセットがほとんどです。そしてそういうセットは安いのですが、質もそんなによくないんですね。
一方鉄工用ドリルは、ホームセンターでも0.1mm単位で販売されています。しかもNACHIや三菱など立派なメーカーです。そしてなにより鉄工用ドリルは安いんです。
ですので、鉄工用ドリルを木工用ドリルに研ぎなおして形状を変えれれば、0.1mm単位で安価にビットをそろえることができるのです。
木工用ドリル(ブラッドポイント)に研ぎなおす方法
では、お待たせしました。鉄工用ドリルを木工用ドリルの形状に研ぎなおす方法です。
まず、必要なのは、卓上グラインダーとドリルを研ぐための冶具です。
卓上グラインダーは↓このような国産メーカーのものでもいいですが、
刃物を研ぐ際は、熱を抑えられるスロースピードグラインダーのほうがよいでしょう。
そして、冶具は↓このようなものを合板で作ります。
左の白っぽい方は、5.5mmの薄い合板。右の茶色は、12mmの合板を使っています。太いドリルの場合は12mmの合板でいいのですが、7mm以下のドリルビットを研ぐ場合は薄い方を使います。取り回しがいいからです。
この冶具の大事なポイントは、77.5度になっている部分です。
また右下が欠き取られているのは、研ぐ際にドリルビットを持ちやすくするためです。
冶具を卓上グラインダーに固定する
まず卓上グラインダーのツールレストの角度を水平から10度傾けます。(写真は10.1度になってますが。。。細かいことはおいておきましょう)
そして自作の冶具をグラインダーのツールレストに写真のようにクランプで固定します。
固定する際、ドリルビットの先端が砥石の右端に来るように調整します。
この時冶具をツールレストに沿わして平行移動できるように、↓このようなパーツを冶具の裏に取り付けていると便利です。
両肩を研ぐ⇒なで肩をあがり肩に
では研ぎ始めます。
まず、なで肩になっている肩をあがり肩にしていきます。
少しずつ肩を落としていき、
なで肩の先端まで研いでいきます。
時折水につけて冷やしながら研ぎます。鉄の色が変わるぐらい熱を持たせてしまうと金属がもろくなってしまいます。
片側の方を落とした状態です。
反対も同様になで肩をあがり肩に研ぎます。
先端を尖らせる
両肩を研ぐと下の写真のようになります。
これでOKのように見えますが、別の角度から見てみると、中心部分が平ぺったい状態です。
この先端部分を尖らせていきます。
先ほどと同じセッティングで研ぎますが、ドリルビットを少し回転させ、先端のひらぺったい部分を尖らせれる角度であてていきます。この時回転させすぎて反対側の肩の先端を研いでしまわないように注意しましょう。
これで、ブラッドポイントとなった木工用ドリルの形状に研げました。
冶具の角度やツールレストの角度の意味は?
今回、冶具を77.5度で制作したものを使いました。またツールレストは10度傾けています。これらの意味はなんでしょうか?
まず冶具を77.5度にしている、つまり直角に対し12.5度傾けたのは次の写真で示す部分に影響してきます。
そしてツールレストの10度の傾きは次の写真で示す部分です。
まとめ
なるべく難しい言葉を使わず、DIYをやっている人なら理解できるようにまとめてみましたが、いかがでしょうか?
木工をやっているとどうしてもきれいな穴を開けたい!鉄工用ドリルじゃバリが出てしまう!というケースがあります。
そんな時に、この研ぎ方を知っていれば解決できちゃいますよね?
ぜひ試してみてください!
また、自分はこんな方法でやってるよ、とか、もっと簡単な方法あるよって方、ぜひ教えてください!
それでは。
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