神戸の竹中大工道具館にて2月9日から3月17日という会期で始まった木工家 川合優さんのSOMAの展覧会に行ってきました。
たまたま2月8日に広島へ出張に行っており、そのまま岐阜へ帰る予定でした。が、その翌日9日の展覧会初日に在廊されるとのことで、これは途中下車して一泊してでも見に行きたい、直接 川合さんの言葉でSOMAを知りたい、と急きょ神戸で一泊することにしました。
そして、生の川合さんの解説を聞きながら、なぜ売れっ子の木工作家の川合さんがSOMAというブランドを始めたのか、そしてその活動を通してどんなことを投げかけていきたいのか、というところをいろいろ感じさせていただきました。
目次
木工家 川合 優さん
川合さんは、1979年生まれの岐阜県美濃加茂市出身の木工家で、僕が木工修行をした飛騨高山の森林たくみ塾の先輩になります。川合さんはたくみ塾13期ですので、代としては7つも先輩ということになります。
大学で建築を学んだ後に、木工の世界に入り、2007年に独立して作家活動を始めました。当時はたくみ塾の同期である富井貴志さんと工房をシェアしていましたが、2012年に故郷である岐阜県美濃加茂に拠点を移し、制作活動を続けています。
そして、2016年にSOMAというブランドを始められました。
僕は2012年から岐阜県立森林文化アカデミーに勤め始めたわけですが、すごく近いところにいるのにほぼ接点がないままでした。川合さんは作家として着々と実績を積み重ねており、僕からしたら少し遠い、憧れに近い存在でしたので、なかなかお伺いできずにいたわけです。
そんな川合さんが日本の木の文化を再発見、または再構築に挑むようなブランド SOMAを始められたのが驚きで、作家として活躍されている中で新しいブランドを立ち上げるところの意味がとても気になっていました。今回の展覧会は、一般向けの展示であり、そこに川合さんの生の言葉で解説が聞けるというまさに絶好のチャンスでした。
竹中大工道具館という場所
竹中大工道具館は4年ほど前に訪れていますが、木の文化と技術を様々な角度で紹介している場所です。日本の木の心をありのままに展示しているので、一般の人でも非常に楽しめる場所ですし、興味深い企画展が多く開催されているので、そういう意味でも要チェックな場所です。
前回訪れた時の記事もあります↓
-
道具以上に日本の木のこころが凝縮された竹中大工道具館に行ってきました。
3月最後の週末、竹中大工道具館に行ってきました。新館として新しくなったということで前々から行ってみたかったのですが、今回 ...
日本人の美意識と木との関わり方を再認識させられるSOMAの価値観
さて、SOMAというブランドを通して川合さんが伝えようとしていること。
それは、日本人としての長い歴史の中で育まれてきた美意識であり、そして人は木とどのように関わり、暮らしてきたかを再認識することで、今の暮らし方を見つめなおし、これからのあり方を考える。そんな価値観をSOMAに感じます。
今回の展示会では、大きく分けて2つの構成になっています。一つは「木の楽しみ方」、もう一つは「SOMAの作品」。この2つを見ることで、当たり前に周りにある木々がどのように私たちの暮らしに取り入れることができるのかわかるようになっています。
特に、最初の木の楽しみ方を知れるところでは、木工の業界にいても知らなかったことや川合さんの感性や知識の奥深さにびっくりさせられることがたくさんあります。
材木の格と作品の格
この展示会で、川合さんが語っていた一つに「材木の格」という言葉があり、また「材木の格と作品の格を合わせることが重要」という話は改めて考えさせられました。
例えば、屋久杉は、木にとって過酷な環境である屋久島で1000年以上育った杉がありますが、一般的に高値で取引される木材です。しかし、川合さんは「屋久杉でベッドを作ったら、つねに1000年のオーラを浴びながら寝ることになるので、絶対安眠できない」といいます。また、吉野杉のような本当に素晴らしくきれいな材料でくず入れを作ることも”違う”、と。
つまり木だから使えるところに使えばいいというわけではなく、その材木の格にあった使い方、材木の格にあった作品を作ることで、よりその真価を表現することができる、という考え方です。
展覧会には、そういった格を合わせた作品とそのストーリーがたくさん展示されています。他にも日本人の感性や美意識につながるストーリーがたくさん紹介されています。
川合さんの作品はこれまでいろんなところで拝見してきましたが、このSOMAの背景を知ったうえで改めてみると、その奥深さが相まって、さらに興味深くなります。
日本の文化、美意識と木
これからの暮らし方やこれからの木工という仕事のあり方を考えるとき、かならず川合さんがSOMAを通して伝えたいことが頭をよぎるでしょう。
展覧会最後に掲げられた「おわりに」のメッセージの中には川合さんの決意のような強い意志を持った言葉が並んでいました。
今回このブログを書くにあたり、もっともっといろいろ紹介したいとたくさんのことを書いていましたが、だいぶ省略しました。それは僕がSOMAを川合さんの言葉で知りたいと思ったように、ぜひSOMAの展覧会へ直接言って、川合さんの言葉で書かれた文章を見て、そしてその手でつくられた作品を見てほしいからです。
SOMA 日本の森と素木の家具
会期 2019年2月9日(土)〜 3月17日(日)
会場 竹中大工道具館 1Fホール
開催時間 9:30〜16:30(入場は16:00まで)
休館日 月曜日(祝日の場合は翌日)
入館料 一般500円、大高生300円、中学生以下無料、65歳以上の方200円(常設展観覧料を含む)
在廊日 2/9,10,21-24, 3/2,17