故秋岡芳夫。僕にとっては世代が違い、そして世界が違い、とても遠い存在です。高度経済成長期に工業デザイナーとして活躍する一方で、大量生産大量消費の時代に突入していくことに疑問を投げかけ、地方の手仕事やクラフト活動を支援してきた方です。今でいう地方活性化のような取り組みも多々あります。
そして、「消費者から愛用者に」を合言葉に1971年に本格的にはじまったグループモノ・モノは職業の枠を超えたコミュニティへ発展し、夜な夜な人が集まり、さまざまな議論が交わされたそうです。当時メンバーは、今では重鎮として各業界の引っ張ってこられた方です。そのモノ・モノは東京中野駅近くのマンションの一室が舞台でした。
そんなコミュニティに所属する作家たちの作品を売るために、秋岡芳夫さんが亡くなられた後もモノ・モノは生活道具のお店として存続してきました。そんなモノ・モノが2015年にリノベーションを行い、生まれ変わりました。
その新生モノ・モノに行ってきました。
目次
マンションの104号室
中野駅から歩いて5分、モノモノは中央線沿いの道から少し入ったマンションにありました。道路からは上の写真のようなモノ・モノのマークがこっちにおいでと呼びかけるようにこちらを向いていました。建物さえわかれば、あとは自然と吸い寄せられるでしょう。
僕自身モノ・モノには初めての訪問でした。記事の最初にモノ・モノ紹介をしましたが、そういうグループがあった、サロンがあった、秋岡芳夫というデザイナーがいた、こんな仕事をしていた人だ、といった程度の知識しかありませんでしたので、新しくなったモノ・モノといっても、ピンとくるわけでもありません。ですので、モノ・モノの中に入ったときは、あぁきれいな木の空間だなぁ、という印象でした。
まるでおうちにいるかのような落ち着く空間
ショップと思っていくと、ちょっとした違和感があるかもしれません。それは、誰かのおうちに来たかのような気持ちになるからです。
一番は、玄関扉を開けて、まずは靴を脱ぐことが理由です。モノ・モノの家具の販売もされているので、靴を履いたまま椅子に座ったり、テーブルについてみたりしても実際に使うときの感覚とは違うため、あえて靴を脱いでお店の中に入ってもらっているそうです。
また、壁には棚があり、そこにさまざまな生活雑貨が並べられているので、ショップのようですが、中央に配置された少し低めのテーブルと椅子に、普通に人が座っておしゃべりをしていたり。奥にはキッチンスペースもあり、まるでリビングダイニングのようです。そういう間取りと、スタッフの自然体のふるまいがおうち感を感じるところなのかもしれません。
暮らしになじむ生活雑貨が
正面の棚には、赤・黒の漆器がずらり、大小いろんなサイズのものが並んでいました。
ぬくもりある木のおもちゃもたくさん。木の木目がはっきりわかるナラの鳥さんなんか、いいですね。中には木のひな人形もあって可愛かったです。
また木のものだけでなく、陶器、鉄器、竹のかごやざるなどさまざまな暮らしの道具があります。
秋岡芳夫さんの言葉がとてもいい
お店の中に、秋岡芳夫さんの言葉が飾られています。
「木は そる あばれる 狂う いきているから だから 好き」
木は生き物。それと向き合って、時には手を入れながら暮らす。そういうのがいいですね。
自分で暮らしをつくる、というのは、道具をつくり、手入れして、使い続けること。そういうものだと思います。
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モノ・モノ
東京都中野区中野2-12-5メゾン・リラ104
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fax.03-3229-0943
http://www.monomono.jp/