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幻のDIY本復活!「杉でつくる家具」はイスもテーブルも 全てオシャレな DIY家具ハウツー本

2019年5月4日

杉でつくる家具 DIY 工作 

DIY熱が高まっているわけですが、それはモノを作るということにとどまらず、暮らしそのものを意味するようになってきていますね。まさにDO IT YOURSELFで、自分でできることは自分でやる、ということです。そこに面白さがあり、奥深さを感じ、より豊かな暮らしにつながっていくヒントがあると思います。

そんな奥深いDIYの世界にいざなってくれる新しい本が出版されました。その名も「杉でつくる家具」です。

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椅子、テーブル、収納家具を24点収録しており、すべてが杉という木材でつくることができます。杉は日本国内で豊富に資源があり、これからの時代どんどん使っていく段階にある樹木です。一方で杉は木材の中では柔らかい部類に入るのですが、ここで収録されている家具は、その特性を考えてデザインされ、しかも機能的で、でもDIYだからといってやぼったさもなく、洗練されたものに仕上がっているんです。

このサブタイトル”幻のDIY本「家庭の工作」から”とあるように、実はここに収録されている家具は、1953年に発刊された「アイディアを生かした家庭の工作」という本がベースになっています。

この「家庭の工作」こそ僕が尊敬する工業デザイナー秋岡芳夫が立ち上げたデザイングループ”KAK(カック)”が生み出したものなんです。

今回はそのあたりの背景も触れながら、この「杉でつくる家具」の魅力に迫っていきたいと思います。

はじめてでも安心!図面と豊富な写真で懇切丁寧な解説

杉でつくる家具 DIY 工作 

「杉でつくる家具」をパラパラめくって驚くことが、図面と写真解説がとても見やすいという点です。

DIY本の中には写真と文章のレイアウトがばらばらで読みにくいものが多いですが、この本は、すべてのアイテムにおいてレイアウトが統一されていて、とにかく見やすい、手順が追いやすい

必要な材料は、どのサイズが何枚必要かまとめられているので、ホームセンターで買う時もわかりやすい。道具も作るものによって必要なものが変わってきますが、アイテムごとにまとめられています。

杉でつくる家具 DIY 工作 

そして、ひとつひとつの工程が写真と共に丁寧に解説してあります。

杉でつくる家具 DIY 工作 

なんて親切!

これぞ原点、のこぎり木工!自分でつくるからこそ味わえる豊かさ

杉でつくる家具 DIY 工作 

この本に収録されているアイテムのすべてが、基本的にのこぎりでつくることをベースにしています。電動工具で使うものはネジ締め用に電動ドライバーと表面を磨くために電動サンダーのみ。木材を切るのはのこぎりを使い、自らの手を前後にギコギコ動かさなければいけません。電動丸鋸やジグソーを使えばあっという間に切れてしまう木材でも、あえてのこぎりを使い、つくる。もしかしたら、まっすぐ切れずに悶々とするかもしれません。

のこぎりにも様々な種類があり、この本では4種類ののこぎりを紹介しています。用途が違えば形も違う。たかがのこぎり、されどのこぎり。そんなのこぎりの魅力に気づけるのもこの本の良いところじゃないでしょうか?

自分の手と体を使い、木を切って組み立てていくこと、そこには、費やした時間に比例するようにモノに対する愛着が増し、さらには不思議なことに暮らし全般に対して見つめなおすきっかけにもつながるといった大きな意味があります。道具に対しての理解が深まれば、すでに所有するモノたちの背景を考えたり、これから何かを買う時に今まで気にならなかったことが気になってきたり。そうやって暮らし方そのものに影響を与えていきます。それがDIYでものを作る意義だと思っています。

面白くて止められないのが工作

他の動物とは違い、人間は道具を作りだすことができる。だからこそ、ああでもないこうでもないと考えをめぐらしながら、自分の手を動かし物を作ることがとても重要なんだと秋岡芳夫は訴えてきました。本書の帯にもこのように書かれています。

人間にとって、面白くて止められないのが工作で、面白くないな早く止めたいなと思うのが作業です。

工作をすること。

僕自身もシェア工房を運営していると、会員さんが実に楽しそうにモノづくりをしている姿をみています。こういう瞬間がより多くの人の日常になるといいなぁと思っています。

工業デザイングループKAKと秋岡芳夫

さて、少しこの「杉でつくる家具」のルーツを遡ってみたいと思います。

「杉でつくる家具」の元となった「家庭の工作」はデザイングループKAKが生み出しましたことは冒頭で紹介しました。

工業デザイングループ KAKは1953年に誕生しました。秋岡芳夫、河潤之介、金子至の3名で、発足当時みな33歳の若いデザイナーグループです。それぞれの頭文字からアルファベット一字をとりKAKと名付けたグループは、日本初の工業デザインの会社組織だったそうです。

彼らがデザインしたものを上げ始めるときりがないのですが、今でいうロングライフデザインという普遍的な美しさと機能性をまとうものが多く、ほれぼれします。その仕事は、ラジオやカメラなどのメカニックなものから、三菱鉛筆のUNIだったり、学研の付録だったりと多岐にわたります。

彼らが目指したものは、徹底的にユーザー目線で考え、世のため人のためにデザインすること。高度経済成長の中、世の中全体が消費するためだけのデザインであふれかえっていこうとしている中で貫いたその思想は、今なお古びるものではありません。

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「消費者から愛用者に」立ち止まった工業デザイナー秋岡芳夫

モノ・モノ モノモノ 秋岡芳夫

KAKの中でも親分肌であった秋岡芳夫はKAKの活動ののち、大消費社会に突入していく世の中に対し、豊かさとは何か、人としてどうあるべきかを問い、グループ モノ・モノを立ち上げます。利潤ばかり追求する大量生産大量消費の時代に警鐘を鳴らし続け、あるべき暮らし方、生き方、価値観を提示するため、賛同する仲間と一緒に夜な夜な議論を交わしていたそうです。

数多くの書籍を残していますが、その中で「自分の生活に必要なものは、自分で工夫して自分の手でつくる。これが人間のものづくりの原型だと、私は信じています。」と、自分で考えて自分の手でつくる「工作」のもつ意義を繰り返し訴えてきました。かつて日本のどの地域にもどの家庭にも存在した”暮らしの中に溶け込む「つくる」という行為”、それがなくなっていくことに、人間としてのあり方を問い続けたのです。

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そして、もう一つ特筆すべき偉業として挙げられるのが、衰退していく地方において、コミュニティ産業として木工産業を築いたことです。全国各地にある彼が作り上げた産地の中でも、特に、岩手県洋野町の大野木工は今でも脈々とその思想を引き継ぎ成り立っています。

岩手県 洋野町にある工業デザイナー秋岡芳夫が生んだ一人一芸の里「おおのキャンパス」に行ってきました。

みなさん、工業デザイナー秋岡芳夫(1920-1997)という人をご存知でしょうか? そもそも工業デザイナーという職業自体 ...

家庭の工作とは

「アイディアを生かした家庭の工作」は1953年に発刊された元祖DIY本です。

しかし、そこにはDIYだからといったやぼったさは微塵もなく、KAKが作り手・使い手目線で考え抜いたデザインが表れています。しかも、杉で、さらには建築材である貫板(ぬきいた)というどこでも手に入る材料を使っているところが、「だれでもできる」というまさに”家庭”の工作を目指した証だと思います。

秋岡芳夫 KAK 家庭の工作 杉でつくる家具

僕は後述する現モノ・モノ代表の菅村さんを昨年訪ねた際に、この「家庭の工作」の原本を拝見させていただきました。

驚いたのは、「家庭の工作」はどうみても主婦の視点でつくられていたことです。日曜大工が普通になされ、一家にひとつ道具箱があった時代。世の中がすこしずつ便利になっていくその中で、求められる使い手の視点。本のすべてのページにおいて、DIYでものをつくることではなく、主婦の視点で暮らしを豊かにすることに主眼が置かれ、そこにアイデアと工夫によってもたらされる楽しさを訴えているような本でした。

家庭の工作を復刻させたグループ モノ・モノと菅村大全さん

モノ・モノ モノモノ 秋岡芳夫

秋岡芳夫が立ち上げたグループ モノ・モノを引き継いだ現代表の菅村大全さんは、ライターとして、そしてモノ・モノの場の代表として秋岡芳夫の成した仕事とその価値の再発掘、そしてアーカイブを実践しています。今回の「家庭の工作」の復刻も、菅村さんを中心にグループモノ・モノとして編集されました。

人の暮らしは「つくる」ことから始まる。秋岡芳夫さんの思想とモノ・モノ 代表菅村大全さんの取り組み

秋岡芳夫さんの「消費者から愛用者に」を合言葉に1971年に本格的にはじまったグループモノ・モノは職業の枠を超えたコミュニ ...

菅村さんはいつも穏やかで、話し方もとても柔らかい紳士ですが、彼の確固たる信念のおかげで、こういった秋岡芳夫の偉業が埋もれず、そして再評価につながっていっているんだと実感します。

杉でつくることの意味

さて、今回の「杉でつくる家具」

なぜ、杉なのでしょうか。

それは冒頭で少し触れましたが、現在日本国内には伐採適齢期の杉が豊富にあり、どんどん使っていくべき段階にあるからです。戦後の国の拡大造林の製作で植えられた樹が60年以上たち、伐採され使われることを待っているのです。しかし、その大半の杉は衰退する地方にあります。かつては林業が存在した場所でも、今では人がいなくなり、山から木を切り出し、製材する人もいなくなってしまった場所はたくさんあります。

そんな中で、杉を使って一般ユーザーがDIYで家具を作ることの意義は大きく、さらにそれが地域の木材を使用することにつながるのであれば、再び人が地域の山・自然とつながり暮らしを築くきっかけになっていくかもしれません。そういう可能性も秘めている本なのです。

菅村さんも本の冒頭で次のように述べています。

日本人にとって最も身近な杉を使って家具を自作し、毎日使うことで、山のこと、木材のことにもっと目を向けてもらえるのではないか。そんな願いから本書は企画されました。

「杉でつくる家具」のワークショップが開催されます!

杉でつくる家具 木工家ウィークNAGOYA

6月に名古屋で開催する木工家ウィークNAGOYA・2019にて「杉でつくる家具」のワークショップが開催されます。

「木のものづくりをはじめるきっかけがほしいな」という方、ぜひ木工家ウィークNAGOYAに足を運んで、さらにはこのワークショップでものづくりの楽しさを実感してもらえると嬉しいです。

詳細:http://woodworkers.jp/program/2019-2/program-1192

いかがでしょうか。

「杉でつくる家具」でものづくりと暮らすことについて考えてみませんか?

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