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広葉樹林の新たな価値の創出へ!飛騨市・広葉樹のまちづくり学校を修了いたしました!

2021年2月28日

先日、「飛騨市・広葉樹のまちづくり学校」を修了いたしました。

昨年の8月に飛騨市・広葉樹のまちづくりツアーに参加して、飛騨市の広葉樹の現況について概要を学んでいましたが、実は、その翌月9月に開校となった「学校」にも申し込んでおり、この半年間、毎月飛騨市に通い、広葉樹の活用について学んでいました。

その一連のカリキュラムが先日終わりましたので、改めてここにまとめてみたいと思います。

飛騨市・広葉樹のまちづくり学校とは

飛騨市・広葉樹のまちづくり学校

岐阜県飛騨市の面積のうち93%を森林が占めており、そのうちの約7割近くが広葉樹の森です。森林資源といえば聞こえはいいですが、実情としては、ほとんどが用材として使えず、”価値がない”とされる小径の広葉樹です。

飛騨市は、この広葉樹の森を”価値あるもの”へ変え、または再定義し、飛騨市の強みとしてまちづくりに活かしていこうとこれまで取り組んできています。このあたりの話は、昨年8月のまちづくりツアーのレポートをご覧ください。

飛騨市 広葉樹 まちづくり ヒダクマ 流通 FabCafe
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そして今回、飛騨市がより具体的なアプローチのひとつとしてはじめたのが今回の「飛騨市・広葉樹のまちづくり学校」です。

この学校は、「お互いが学び合い、関係性をつくり、実践する」と公式サイトにもうたわれている通り、飛騨市内だけでなく、市外、そして県外からも林業側の上流、製材・木材加工などの中流・下流にわたるさまざまなプレイヤーが参加し、互いの知見をもって飛騨市の現状を学び、ともに具体的な取り組みを始めていこう、というものです。

飛騨市をフィールドに広葉樹の施業、製材、加工、流通、販売の流れを学びます。また今行われている挑戦をそれぞれ共有し、人とのつながりをつくり相互理解を深め、今後、飛騨市の広葉樹の活用について具体的に考え実践することができる人材育成を目指しています。

今回参加してみて、この学校のポイントは以下のようなところにあると思います。

飛騨市・広葉樹のまちづくり学校のポイント

  • 分野を超えたメンバーとの学びと交流
  • それぞれのメンバーが各分野のプロフェッショナル
  • 川上から川下の流れだけではない広範囲に学ぶカリキュラム
  • 具体的に求められるアウトプット

また、受講生がときには講師役にまわったり、講師陣が受講生と一緒に考えたり、まさに学校全体で考えて進んでいく現在進行形なものでした。

カリキュラム

振り返るためにも、改めて、カリキュラムを書き出してみました。

9月: 飛騨市の広葉樹のまちづくり
飛騨市・広葉樹のまちづくり学校
飛騨市・広葉樹のまちづくりとは(概要説明)
飛騨市の広葉樹施業の実践
飛騨の広葉樹の流通と製材・乾燥
飛騨の広葉樹によるものづくり
広葉樹の新しい価値創造の挑戦
飛騨市役所林業振興課
飛騨市森林組合
西野製材所
北々工房
FabCafe Hida
10月:価値の高い広葉樹の森づくり
飛騨市・広葉樹のまちづくり学校
育成木施業の伐採現場の見学と実践の解説
広葉樹の森の観察と広葉樹の特性
価値の高い森づくりワークショップ
価値の高い広葉樹の森づくりについて
岐阜県立森林文化アカデミー 横井教授
11月:広葉樹原木の流通と製材乾燥
飛騨市・広葉樹のまちづくり学校
原木市場の実態
広葉樹の製材と乾燥
広葉樹の搬出、流通、原木・チップ・おが粉加工と市場の実態
広葉樹の搬出、流通、原木・薪の加工と市場の実態
広葉樹の製材の実際
岐阜県森連飛騨共販所
株式会社カネモク
株式会社奥飛騨開発
株式会社柳木材
西野製材所
12月:広葉樹の建築と家具への利用
飛騨市・広葉樹のまちづくり学校
木工房・木工作家の広葉樹の活用
工務店の広葉樹の活用
家具メーカーの広葉樹の活用
家具メーカーの広葉樹の活用研究
家具メーカーによる広葉樹の建築・家具への活用と全国の動向
岐阜県立森林文化アカデミー 渡辺先生
田中建築
飛騨産業株式会社
飛騨産業株式会社きつつき森の研究所
オークヴィレッジ株式会社
1月: 広葉樹の多様な可能性
(コロナによる緊急事態宣言でオンライン開催)
広葉樹の新しい活用研究
広葉樹に関する研究開発の動向と実際
広葉樹の多様な木材利用
広葉樹林と地域の暮らし・産業
広葉樹林の空間利用についての事例紹介とワークショップ
飛騨市広葉樹活用研究WG
岐阜県生活技術研究所
岐阜県立森林文化アカデミー 久津輪教授
飛騨市役所河合振興所
飛騨の森ガイド協会・飛騨市健康ウォーキングガイド協会
2月: 広葉樹の新しい価値の創造
飛騨市・広葉樹のまちづくり学校
受講者の取り組み紹介
飛騨市の広葉樹の持つ価値を最大限引き出すためのプラン作成
市長プレゼン
修了式

なかなか専門的な内容ですね。普段の仕事で僕が関わるのは主に製材~木材加工のところ。とはいえ、その域であっても、チップ、おが粉の市場がどうなっているのか、木材加工でも先端研究ではどんなことが行われているのかなど、なかなか接点がないフィールドも多いです。ましては、専門外の林業のところや森林空間の利用の分野については、新しいことがいっぱい。学校がはじまる前は、毎回レポートをブログに記していこうと思っていたのですが、毎回毎回頭がフルに稼働し、満杯になりオーバーヒートするような時間を過ごしていたためできずじまいでした。

詳細な実施事項やレポートは公式サイトに掲載されています。参加者のコメントなども整理されているので、一見の価値あり!

「広葉樹のまちづくり学校」は、飛騨市が広葉樹活用を軸とした持続可能な 地域づくりに挑戦する人材育成のため、飛騨地域の実践者が互いに学び合い、 連携できる関係性をつくることを目的とした実践型のスクールです。

悶々と飛騨の広葉樹の木材の価値をどう見出すかを考え続ける

飛騨市・広葉樹のまちづくり学校

具体的な内容は公式サイトをご覧いただけばわかっていただけるので、ここでは僕が個人的にどういう考えで、どういう思いでこの学校に参加していたかを書いていきます。

地域材流通の具体的なアプローチを求めて

そもそもは、「地域材流通」ということで、地域の人が暮らしのなかで使う道具をその地域の木を使ってつくるためにはどういう仕組みが必要なのか、各地域を見て回っていました。本記事の最初の方で紹介した飛騨市・広葉樹のまちづくりツアーに参加したり、神戸の事例を見に行ったり。

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僕が住む岐阜市のような林業がない地方都市ではどんな要素が必要なのか。そのヒントを得るためにこの学校に申し込んだ、という経緯がありました。

いい意味で期待外れだったのは、何か決まったものを教えられるのではなく、現状はこういう状況だから、どうやれば広葉樹の流通が成り立ち、どうすれば町としてその価値を生み出していけるのかを参加者全員で考えるというものだったことです。それぞれプロが持ち寄った知見が相乗効果を成して、最終的に面白いユニークなアイデアにつながっていきました。

飛騨市広葉樹の難しい現実から生まれた学校

つくり手として飛騨の森を見て、今回の内容を学び進めていくと、通常の木材利用を前提にして考えることは意味がないことに気づきます。用材として出せる木材はわずかであり、大半が小径木であり、それも樹種もさまざま。これを普通に流通させようなんて考えること自体が間違っているように思えます。9月からはじまった学校で順番に森づくり・林業、製材、乾燥、木材加工と”一般的な”木材の流れをみていくと、その思いはどんどん強くなるばかり。

冷静になって考えれば、そもそも普通の広葉樹の活用に当てはまるのであれば、わざわざ公費を使ってこのような学校を企画し、さまざまなプロを各地から集め、学び合う必要なんてないのだ、と我に返るような思いでした。

小径木の活用と市民のエンパワーメント

飛騨市・広葉樹のまちづくり学校

僕は、常に「個のエンパワーメント」が必要だと思っています。従来のマスの経済に当てはまらないのだったら、個々の力の集合体で解決をさぐるべきだ、と。そのためにどんなピースが必要なんだろうか、と考えることが多いのです。

例えば、僕がやっているシェア工房「ツバキラボ」は、個人が本格的に木工に取り組める術を持つことができたらどうなるのか、そこでは規模の経済では流通しにくい地域材が当たり前に入手できたらどうなるのか、そういう実験的な意味も含んで運営しています。

学校が始まった当初は、飛騨市でもこのような市民のエンパワーメントを意図した工房を運営し、そこに飛騨の広葉樹をつかうことがいいのではないかと考えていました。個人レベルのものづくりであれば、高品質の木材が大量に必要になることはありません。飛騨の森にあるような小径の木材でも大半は事足りるでしょう。

しかし、それでは圧倒的な飛騨市の資源量を裁くことはできません。

そんなジレンマが気持ち悪く残り続けていました。

飛騨が培ってきた自然と人の暮らしの知恵

そんな悶々とする日々が過ぎていき、年が明けての1月の講義。緊急事態宣言が発令されたことによりこの回はすべてオンラインでの実施になりました。

「広葉樹の多様な可能性」と題された1月の講義の2日目、「広葉樹林と地域の暮らし・産業」という項目で飛騨市役所河合振興事務所の野村所長が解説してくれた内容を聞いて、僕の中では少しずつ解が見えてきたような気がしました。

自然をずっとミクロの世界でみていくと、森、動物、微生物が互いに作用してダイナミックな自然の循環が存在しています。山菜やキノコなどもあり、また薬草など自然の恵みがどのように人に作用するのかという話もありました。飛騨市が、このまちで長年にわたり自然を研究し、地に足付けた暮らしの営みを実践してきたことを知りました。

そこにはビジネスや経済規模の資本主義社会ではなく、サステナブルな自然の循環に価値を置く循環価値社会となります。そして、森林資源を経済価値に直接換金を急ぐ必要もなく、必要となったら必要となったときに切り出していく、それも自然体に任せていけばいいじゃないかと思うようになりました。地球の46億年のなかの数年、数十年なんて無いに等しいものだし、人間があせって今何かをしようすることもないのじゃないか、とすら思えてきます。

そして、その日の午後には飛騨の森ガイド協会 会長の岩佐さん、飛騨市健康ウォーキングガイド協会の武藤さんの講義があり、人の健康と森についての講義がありました。もともと登山やトレッキング、ハイキングなどの山や森林空間を活用したスポーツは一般的ですが、森林セラピーを超えたクアオルトという自然治療の分野があることを知りました。

もともと、木のものづくりもある意味での心身のリフレッシュ行為であり、実際に、ものづくりに没頭する時間をもつことでストレスが解消されることがあります。

そう考えると、飛騨には、人が心身健康であるための要素がすべてそろっていて、それらがうまく連携が取れれば、とても魅力的なまちにつながっていくのではないかと考えるようになりました。

チームで広葉樹のまちづくりプランをまとめ、市長プレゼンへ

飛騨市・広葉樹のまちづくり学校

2月の最終回、それぞれのメンバーがこれまでの学びを通して、考えた実行プランを発表します。それにたいして、全員で投票しいくつかのプランを選定、そしてグループに分かれ、市長へプレゼンできるレベルまで具体化していきます。

僕の案はこの投票を通りませんでしたが、非常に近い考えのプランが採択されたので、そのグループでさらに案を具体化していきました。

提案プラン: 森とリトリート・ステイ

それが「森とリトリート・ステイ」です。

飛騨に1週間~3週間ほど滞在しながら、次のようなコンテンツを通して、心身をリフレッシュするためのリトリート施設を作ろうというものです。

↓が当日作成したプレゼン資料です。建築家、土建業、林業コンサル、木工家の4人のメンバーでそれぞれの知見を出し合い、まとめました。

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Slider

リトリート・ステイ コンテンツ

  • 森と生きるを感じる・・森林セラピー、森のヨガ、薬草、アロマ
  • 体に優しい食事・・・・山菜、キノコ、地元のオーガニック食材、フルーツ、ワイン
  • クリエイティブな時間・・飛騨市の木材を使ったクラフト体験、森林や山岳などの風景画など
  • 未来へ託す・・・・・・子ども向け環境教育、植樹

さらに施設は、オフグリッドで飛騨市産の木材をふんだんに使った建築群。エネルギーも自然エネルギーで賄うというものです。具体的な場所も、冬はスキー場として活用しながらも、夏の活用ができていない地元のスキー場を選定し、一年中通して賑わいをつくっていくという考えです。

すでに飛騨市が持っているさまざまな「価値」を集合させ、連動させることでより大きな価値が生まれると思います。このプランを実行することで、健康やウェルネス需要の高まりと相まって、リトリート、またはクアオルトの国内の先端事例として、飛騨市のブランドを高めるものになるのではないか、という思いでまとめていきました。

建物やフィールドでイメージしたのは、アメリカ メイン州にあるHaystack Mountain Schoolです。10年前に行って以来、ずっと日本にもこんな場所があったらなぁと思っている学校です。(Haystack Mountain Schoolの体験記はこちら↓)

ほかのチームの提案プラン

飛騨市・広葉樹のまちづくり学校

他のチームからの発表プランは、次のようなものがありました。どれもユニークでありながら、それぞれがプロであり、専門的な視点で構成された実用性高いプランばかりでした。

発表プラン

  • 小さくて多様な物流システムと広葉樹エネポの導入
  • 飛騨の広葉樹ウハウハツアー
  • 広葉酒のまちづくり(広葉樹から作った酒樽で飲み比べ)
  • ”広”葉樹の土”場”⇒広場

最後は飛騨市長へのプレゼンを行いましたが、どのプランも評価いただきました。これらの案は、飛騨市がこれから広葉樹のまちづくりを進めていく中で実現していくものも出てくるかもしれない、ということです。そういう意味では、飛騨市のこれからがますます楽しみになりますね。

まとめ

飛騨市・広葉樹のまちづくり学校

最後は、修了式をおこない、半年間にわたって実施された「飛騨市・広葉樹のまちづくり学校」は終了しました。

個人的には、ここで得られた知識も経験も人脈もこれから力になっていくと思います。自分が住んでいる町で地域材の流通の仕組みを作ろうと動いているところですので、気持ち的によりアクセルが軽くなったようです。

たぶん、参加されたほかのメンバーのみなさんも、それぞれのフィールドで同じような思いを持っているのだと思います。

そして、今回この学校を企画・運営された飛騨市の職員の方々、株式会社トビムシのスタッフの皆様にはコロナというとても難しい状況下で受講生の学びをサポートしてくださり、本当に感謝しています。ありがとうございました。

これからも飛騨の森が豊かに、飛騨のまちが豊かになっていけるように、それぞれの立場で役割をこなしていきたいと思っています。

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