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木工を仕事にしたい人へ:正しく理想のキャリアを歩むための4つのステップ

2019年10月15日

最近、木工志願者として僕が運営するツバキラボを見学に来られる方が増えています。木工品や木製家具などを制作する通常の木工房ではなく、シェア工房と謳っていることもあって珍しさがあるからかもしれません。見学に来られる方の中には、すでに木工を学んでいる方もいますが、これから木工の道に進もうとする方もいて、いろいろな相談にのっています。

そういう方たちのために、まずはこういうところをしっかりやった方がいいよ、ということを4つのSTEPとして、まとめておきたいと思います。

僕の木工キャリアの歩み

そもそも、僕は木工の業界に入ってからどんなことをしてきたのかをまず説明した方が、ここに書くことについて説得力が増すかなと思います。

プロフィールは、こちらのページに詳しく書いておりますが、改めて。

木工の業界に入るまでは、自動車メーカーに勤めていました。大量生産大量消費を象徴するような業界で忙しく働いていたこともあり、自分の人生これでよいのかな?と疑問に思い、もっと自然に近いところで、人と交じり合いながら、大切にされるものを作り出すことを仕事にしたいと思い、木工の世界に飛び込みました。

木工修行

最初は、岐阜県の飛騨高山にある株式会社オークヴィレッジのグループ企業である職人養成機関の「森林たくみ塾」に入りました。2年間、月曜日から土曜日まで、みっちり木工漬けになる日々を送り、その中で実際の商品としてお客様の手に渡るものを作りながら、職人としての技術を覚えていきました。

伝統的な日本の木の文化に学び、木という再生産可能な素材を使いこなし、持続可能な社会を担う「現代の匠」となる人財を育成。

Haystack Mountain School

県立の学校で木工を教える仕事

当初は、森林たくみ塾を卒業したら、地元ですぐ独立することを目指していました。ですので工房としての場所を探し、機械屋さんから機械を購入し、個人事業主として開業届も出していました。

少し家具の仕事をし始めたころ、岐阜県立森林文化アカデミーで木工の教員を募集しているという話が舞い込み、そちらをチャレンジしてみたい、と思い応募。選考試験の結果、合格したため、開業してから数か月で廃業届を出し(笑)、2012年より森林文化アカデミーにて木工の教員を務めることになりました。

森林文化アカデミーには5年間在籍していましたが、その間、学生らを連れて、たくさんのメーカーや家具工房、木工所などを見学しました。また林業や建築の分野の方々とも交流することができました。自分自身、様々なチャレンジをすることができ、非常に充実した日々を過ごさせていただきました。

岐阜県立森林文化アカデミーは、林業、森林環境教育、木造建築、木工など、森林や木材に関わる分野を学ぶ2年制の専門学校です。

独立、そしてツバキラボ開業

しかし、その後のキャリアを考えた時に、会社経営にチャレンジしたい、という思いが強く、2017年に退職、起業し、ツバキラボを開業することになりました。(木工で「独立」ということについては、別途記事を書きたいと思っています。)

以上、自分自身が「木工やりたい」「独立したい」などの思いからいろいろやってきたこと、そして教員として木工を教えるという立場もあり、多くの人の話を聞いてきました。

ですので多くの人にとって共通するアドバイスなども大体あるわけです。それをこれから記しておきたいのです。




正しく理想の木工キャリアを歩む4つのSTEP

Haystack Mountain School

step
1
なぜ木工をしたいのかを明文化する

どんなことでもそうですが、「文字で書き起こす」という作業は次の2つの意味において、とても重要です。

明文化が重要な2つの意味

  • 書くことにより自分の考えを整理することができる
  • 目で見える形にして、何度もみかえせるようにする

何かを始めるときは、勢いがありやる気があふれ、どんなことでもチャレンジしてやる、という気持ちが強いのですが、少し経つとの勢いも落ち着いてきて、冷静に「これで大丈夫か?」と思う時が必ず来ます。それは勢いがあるときには見てみぬふりしていた不安要素が次第に視界に入ってくるからです。その時に、文章にしてのこしていると、なぜ自分がこの道を歩んでいるのか、振り返り、初心に返ることができるのです。

そして、その明文化された思いは、その後さらに役に立つ時が来ます。

就職であったり、独立するとき、必ず避けて通れないのが、「誰かに話す」というプロセス。就職する際は面接する人、独立する際は、例えば銀行の人や商工会議所の人などに、なぜ自分が木工をやろうと思ったのか、必ず話をしなければいけません。そういうときに、すでに明文化され、その文章を何度も何度も見返して、自分の一部としてその言葉を発せられる人は、聞き手に上手に熱意を伝えられます。

step
2
希望する仕事の立ち位置を探る

木工と言っても、携わり方はたくさんあります。

すぐに思いつくのは、「職人」ですよね。とにかく、作ることのプロフェッショナルです。高い技術をもち、精度の高いものをいかに短時間でつくりあげるか、というところで勝負するひとです。

他には、「木工デザイナー」というのも一般的です。自身では作らず(またはプロトタイプまでは作る)、木を使ったモノのデザインをするプロフェッショナルです。これには、木工の知識・技術を最低限持ち合わせていないと成り立ちません。

インテリアの販売も木工に携わる一つの職業です。メーカー品だけでなく、家具作家の作品をセレクトしてお客様にその魅力を伝え、購入してもらうことのプロフェッショナルです。

他にも、修理のプロがいたり、僕のように「教えるプロ」がいたり、木工の魅力を伝える記事や本を書くライターや木工の道具を販売する人などたくさんの仕事があり、その組み合わせで成り立っていきます。

そして、立ち位置として企業(メーカー、販売会社)で働くのか、個人事業主として仕事をしたり、小さな会社を経営するなど、選択肢はその組み合わせで無限にあります。

自分は何に向いていて、何に向いていないのか、とにかく時間をかけて深堀していくプロセスです。




step
3
何から始めるべきか見極める

自分は何に向いていて、何に向いていないのか。これをとことん突き詰めていくと、「木工やりたいな」という漠然とした思いが、より具体的な目指す道に変わります。

例えば、「椅子に特化した職人集団のちいさな工房を経営したいな」といった具合に具体的になったとき、やるべきことは最低限の木工の勉強のほかに、経営のことも勉強しなければいけないですし、いい職人を集めるための人脈の洗い出しや情報収集を始めなければいけません。
木工の勉強は、椅子づくりに特化すべきですし、最低限なので1年も、2年もかける必要はないかもしれません。むしろ職人を束ねるリーダーシップだったり、職人が集まってくれる仕組みづくりの方により労力を注ぎ、お客様に選ばれるための椅子のデザインを考える、またはデザイナーに発注するなどの準備の方が大事になってきます。つまり、技術の習得に無駄に時間を費やす必要はないのです。

これは、STEP2で自分は何をしたいのか、を明確にしていることで物事の取捨選択と優先順位付けができる、ということです。実際には、とても悩ましく、捨てに捨てきれないものだったり、漠然としているから”とりあえず”といった感じであれこれ手を出してしまいそうですが、ここを1点にフォーカスできるようになると、後々の展開が非常に楽になります。

step
4
可能な限り現場を見る

STEP3で、やるべきことがはっきりしてきたら、とにかく多くその現場を見て回りましょう。たくさんの現場を見れば見るほど、たくさんの人と話せば話すほど、自分の趣向であったり、考えの方向性がさらに定まってきます

ある現場を見て、何か違うなと感じれば、どんな要素がそう感じさせるかを考え、それがわかれば自分にはその部分はあてはめないようにすべきです。
ある人と話して、共感できる部分があれば、それを自身のキャリアに当てはめていきます。

このプロセスでは、ネットワークが広がり、人脈が育っていきます。そしてSTEP1で明文化した思いを、たくさんの人に話していけば、また具体的なアドバイスがいただけたり、重要な人物を紹介してくれたりするようになります。

4つのステップはとにかくエンドレス、そして行動に結びつける

以上、4つのステップを書きましたが、これは1から4まで順番にやったら終わりではなく、これらは常にエンドレスでぐるぐるぐるぐるやる必要があります。順番もばらばらかもしれません。

そういうなかで、より洗練された考えが生まれ、唯一無二のキャリアにつながっていくのではないかと思います。

ただ、頭の中で考えるだけではなく、どれだけ行動に結びつけられるかが重要です。

木工に憧れる人は多いですが、いまいちどうやってその職につけばよいかわかりにくい業界です。よくわからないけど、まずは技術を学ぼう、というのはもしかしたらよくない選択の場合もあります。今は情報が得やすい世の中ですが、逆にそれに溺れてしまうこともあります。

4つのステップでしっかり自分の進むべき道を見つけてもらえたらうれしいです。

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