2か月前ほどになりますが、うちの工房「ツバキラボ」の東海の横切り盤を処分し、新しくスライドソーを導入しました。導入したのは、SCMというイタリアの木工機械メーカーのminimax sc 4eという機種です。
なぜ、東海の横切り盤を処分したのか、そしてなぜSCMのスライドソーを導入したのかを記しておきます。
目次
事の発端はスタッフの怪我
今回新しいスライドソーを導入した一番の理由は、安全対策です。というのも、僕が経営するツバキラボにはスタッフがいるのですが、彼が昨年夏に、昇降盤で指を切る大けがをしたのです(幸い指を失うという最悪の自体には至りませんでしたが、かなりの大けがでした)。経営者として、スタッフにけがをさせてしまった事実にかなり自分自身に失望したのですが、これを機に、工房をより安全にしていかなければいけない、と決意しました。
というのも、僕が運営する工房は通常の木工所としての機能だけではなく、一般の方でも利用できるシェア工房という機能も持ち合わせています。そのため、今回の怪我がスタッフではなく、一般の工房利用者だったら、と思うとゾッとします。何が何でも安全な工房にしなければいけない、と思ったのです。
昇降盤は使用禁止に
昇降盤には、丸鋸のカバー(ブレードカバー)はついていませんし、割刃と言われる、キックバックのリスクを低減するものもついていません。
もともとうちの工房では、昇降盤のほかにSawstopという万が一 人体が丸ノコに触れたら、瞬時に刃がテーブル下に落ちるという絶対的安全機能を備えたアメリカのメーカーのテーブルソーもあります。Sawstopにはもちろん割刃もついていますし、ブレードカバーも取り付けられます。安全なのです。海外のメーカーは安全対策には徹底的に取り組んでますからね。
しかし、絶対的に安全な機械があるにも関わらず、昇降盤は使い慣れていることもあり、僕も含め、なんとなく昇降盤の方が利用頻度が多かったのです。。。こういった実情になんとも思わなかった自分が情けない。
そこで、昇降盤を使用禁止にしました。そして、Sawstopだけを使うようにしました。
ですので、実際に事故が発生した昇降盤に対する対策はこれだけです。
スライドソーに更新することを決意
しかし、安全な工房を目指すうえで避けて通れなかったのが、横切り盤でした。
横切り盤には、割刃もない、ブレードカバーももちろんありません。丸鋸がむき出しで回っているのです。
従来の日本の木工汎用機は、安全対策は二の次だったようで、どのメーカーもどの機種も、古ければ古いほど今では当たり前の(法令に定められた)、装置が備わっていないのです。そして、今は国産の木工汎用機は一部を除き、メーカーが倒産したりして、新品のものは開発も販売もされていません。
よって、安全な機械を求めると、自然と海外メーカーのものが候補となるのです。
設備更新は、経営の上では、非常に戦略的に考えなければいけません。安い買い物ではなく資金繰りにも大いに影響するので、慎重に判断しなければいけません。しかし、やはり工房を使う人たちの安全を考えると、更新しないという選択肢はありませんでした。
SCM minimax sc 4eを選んだ理由
海外メーカーのスライドソーとなると、まっさきに候補に挙がるのが、フェルダー(Felder)、アーテンドルフ(Altendorf)でしょうか。アーテンドルフは車でいうとベンツみたいな高級機という印象があり、実際価格も高額となるため、個人的にはフェルダーかなぁと思っていました。
そこで、昨年の名古屋ポートメッセで開催された木工機械展に行っていろいろ見て回ったのですが、そこで目についたメーカーがSCMでした。以前から知っていましたが、影が薄いというかパッとしないというか(メーカーの人スミマセン)。でもいろいろ話を聞いていると今回購入したsc 4eが自分の工房にぴったしなものじゃないかと思うようになったのです。
価格が手ごろ
一番の理由をあげるとなるとやはり価格です。予算としては、250万ぐらいを想定していました(購入資金についてはまた別途ブログを書こうかと思っています)。しかし、このsc 4eはおおよそ150万。これはお買い得です。
後述しますが、それでいて必要最低限の機能は備わっています。
最低限の安全装置がしっかり備わっている
sc 4eにはブレードカバー、割刃といった最低限の安全装置が備わっており、そして、鋸に近い部分には板を抑えるクランプがついています。
丸ノコに接触してしまうリスクをより少なくする工夫がされているのです。
そして重要なのが、安全装置が備わっていて、かつ作業性が失われないこと。例えば、協和のペティワークは刃を覆うカバーは標準でついていますが、とてもじゃないけどそれをつけて作業なんてできない代物です。本当にユーザーのことを考えているのか?と疑いたくなります。今回のsc 4eはそういったことがなく、作業もこれまで通りできることが良かったです。
NC制御もなく、操作系もシンプル
最新の機械は、リップフェンスや鋸の角度がNCで制御できる機械がありますが、それらはうちの工房ではオーバースペックなものです。そういったところで数十万価格が跳ね上がるのであれば、もっとシンプルで価格を抑えた方がよい。
コンピュータが壊れてしまうと、修理できないという話も聞きます。
またうちの工房は一般の人たちも利用するので、操作系はとにかくシンプルなものがいいのです。
よってsc 4eは最適な機能を持ち合わせていたのです。
申し分ない機能性
これはsc 4eに限らず、どのメーカーでもそうでしょうが、海外のスライドソーは、日本の横切り盤とは操作性が異なります。鋸の左側がスライドする、ということはもちろんですが、その他にも、さまざまな機能があります。
定規の角度を簡単に変更できたり、カットするモノによって手前定規⇔奥定規を簡単に変更できたり、リップフェンスを楽に設定できたり。様々な機能が標準となっており、これらは横切り盤では実現できなかったことです。
まとめ
以上、価格的にも手ごろで、機能も申し分ない、ということでSCMのsc 4eを購入することにしたわけです。
実際2か月ほど使っていますが、非常に便利になりました。
さらに想定外の効果として、白いボディが工房を明るくしてくれています。工房の雰囲気も明るくなり、これはほんといいことです。
ということで、なかなこういう情報はネットで出てこないので、誰かの参考になれば、と思いまとめました。