考え・雑学

先輩外国人横綱 曙が語る「横綱の品格」。現在の「横綱の品格」は、要するにジェントルマンであり、リーダーシップがあること。

2017年12月1日

大相撲 岐阜 信長場所

横綱 日馬富士は、最終的に「引退」を自ら選びました。

現役力士の中では一番好きだった日馬富士の引退は、ファンとしては「残念」以外の何物でもありません。しかし、暴行の事実があれば、そして事件となってしまえば、横綱以前の問題です。選択肢としては「引退」以外はないと思います。それが勧告を受けてのものでなく、自ら引退を選んだことは「悔しさ」はあるけれど、潔さを感じました。

今回の日馬富士の一件、よく話題に出る「横綱の品格」とは何か、なぜ引退なのかを改めて考えさせられました。

初の外国人横綱となった曙。彼の言葉を聞くと、少し現在の横綱とは違う面が見えてきます。

企業で考えれば、暴力はパワハラ、完全アウト

今の時代、暴力は完全にアウトです。

それが上の者への失礼な態度に対する対応であっても許されるものではありません。一般的な企業であれば、上のものが部下に説教しているときにスマホを触っていたことを理由に指導といって暴力を行えば完全にパワハラととられるでしょう。

ほかのスポーツでも、指導の一環として暴力が行われていれば、大問題です。それは、相撲という特殊な世界であっても許される時代ではないと思います。

「引退」は行き過ぎ、再起の道はあったという意見があるようですが、相撲界、力士の最高位である現役横綱が暴力を行ったことが事実であることは間違いないので、「引退」以外の選択肢はないでしょう。

先輩外国人横綱 曙が語った「横綱の品格」

相撲は国技であり、横綱は「神の依り代」でもあります。そういう意味では、「品格」というのは非常に解釈が難しいところがあります。先輩外国人横綱である曙は、横綱について次のように語ったそうです。

初土俵からわずか三十場所で登り詰めた角界最高位。いつも「横綱とは何か」と自問している。「日本人の世界で神になること」と曙は言う。古来の神事に由来する相撲。そのグランド・チャンピオンは「神」でなければならない、と思っている。先年引退した木村庄之助ら角界の先輩から教わった心得だ。

土俵入り「横綱になって、街にいけば神様と思われるかと思ったが、そうじゃない。横綱の地位を理解し、そこに近づくよう階段を上っていくことが大事。強さだけでなく、その地位にふさわしくなることは難しい。まだまだ半分も分かっていない」

神様になって悲しいのは、同僚とふざけることが出来ないこと。小錦が後輩を励ますために開いてくれたハワイ力士のパーティーにも行けなくなった。一晩でヘネシー四、五本もいったのが、酔って品格を失うことを恐れ、ボトル一本も空けられなかった

(1994/1/8 読売新聞 抜粋)
出典:横綱の品格について考えてみよう

現在と比べると、横綱に対する「畏敬の念」がだいぶ違うように感じます。これを時代が変わったから、と解釈すべきか、「横綱」という地位が軽く見られるようになったのか。

曙は、「酔って品格を失うことを恐れた」と言っています。酔ったら手が付けられなかったといわれる日馬富士とはだいぶ違います。

曙は次のようにも語っています。

ボクシングではトレーニングを積んで試合に勝って、チャンピオンになる訳だけど、家に帰れば普通の人。しかし、横綱は二十四時間いつも横綱。品格ということがよく言われるでしょ、それが本当に重要。横綱であるということは、自分自身とその地位に対して誇りを持たなくてはいけない。だれもがなれる訳ではないからね。今までに六十四人しかいない

(1994/1/8 読売新聞 抜粋)
出典:横綱の品格について考えてみよう

曙は、引退後の格闘家への転身などで一般的に「好印象」ではありませんが、相撲力士現役時代は、相当評判がいいのです。「横綱の品格」が問われることも皆無で、心が広く、後輩の面倒見もよく、けいこ場でも胸を貸し、責任感の強い横綱だったようです。日本人以上に豊かな心を持った横綱だった、との声もあります。




どのように品格が身につくのか NHKアナウンサー刈屋富士雄さんのことば

NHKアナウンサー 刈屋富士雄さんが横綱の品格について解説した内容が興味深い。

人よりも自分に厳しいこと
人よりも努力をすること
そして、人に対して優しくあること
そういう日々を送ることで身につくもの

横綱とはどうあるべきか、品格とはなにかを品格に常に悩まされていた元横綱朝青龍に話したエピソードです。

詳しくは↓この記事で。

こんにちは。相撲が大好きなワダケンジ(@simplife_plus)です。一瞬できまる勝負事のなかに、すごく奥深いものを感じることができるのはほかのスポーツではなかなかありません。その大相撲、現在は日本人の横綱はいません。1998年に若乃花(お兄ちゃん)が横綱になったのが、日本人の最後の横綱であり、20年近く日本人の横綱昇進はありません。僕が好んで相撲を見るようになったのは貴乃花はすでに引退し、朝青龍の時代だったので、日本人横綱の姿みてないんですね。そのため、角界のみならず一般的にも日本人横綱の誕生を待ちわびてい...

現在の横綱に求められる「品格」とは

横綱白鵬に、優勝インタビューの際に行った万歳三唱に対して「横綱の品格」にかかわるとして、厳重注意が与えられました。横綱白鵬の万歳は、いろいろあるけど来場所もどうかみんなで相撲を盛り上げていきたい、という気持ちの表れでしょう。白鵬なりの責任感の表れだと思います。しかし、この厳重注意の際にでてきた「横綱の品格」とはなにか?

「国技である相撲は、守礼を基本とする日本の精神文化そのもの」である一方、外国人力士も各国から集まり、そしてファンも世界中にいます。「横綱」とはなにかを外国人にもわかりやすく説明できないといけないですよね。

礼儀を重んじることはもちろん大事である一方、精神論を求めすぎるのはよくないと思います。そして、横綱らしい立ち振る舞いとはそもそもなにか。

ファンがあっての相撲。そして協会、後援会、関係者たちがあっての相撲。そういう周りの人たちに温かく接する態度。つまりはジェントルマン。
そして、後輩たちの面倒をよくみて、率先して稽古で胸を貸し、一歩土俵に上がれば威厳と強さを見せつける。リーダーシップ。

今風に解釈すると、「ジェントルマンであり、リーダーシップを発揮できる」ことが「品格」なのかなぁと思います。

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