木工 生き方

木工家は子どもの憧れの職業になれるか?八ヶ岳で開催されたWoodworker's Meeting 2019に参加してきました!

2019年9月2日

春から夏へ季節が移る5月、日本を代表する木工家の一人、吉野崇裕氏から木工家ネット(多数の木工家が参加するメーリングリスト)にある案内が届きました。

「Woodworker's Meeting 2019 八ヶ岳 開催のお知らせ」と題されたそのメールには、アメリカの木工家具学会であるFurniture Society Conferenceに感銘を受け、日本でもフラットに学び合える会を開催する、という旨が書かれていました。ベテランも若手も関係なく、それぞれの考え、仕事観、スタイル、失敗談、成功談をシェアし、共に考えることで、より高みを目指していこう、というものでした。

僕自身、木工の世界に入って10年。ここ数年、木工家同士の交流が盛んになってきたとはいえ、このような機会は今までありませんでした。これは、これからの日本の木工の中で新しい世界への入り口になるかもしれない、とこの会の参加を決めました。

会場となる八ヶ岳の文化村(廃校を活用した施設)で、8月30日から9月1日の日程で開催され参加してきましたので、ここにレポートを残しておきたいと思います。

Woodworker's Meeting 2019 木工家 吉野崇裕 島崎信 平井健太

Woodworker's Meetingが目指すところ

Woodworker's Meetingは、上にも書いた通り、木工家同士の学びの場です。その目指すところについて、主催の吉野さんの説明によると

Woodworker's Meetingの目指すところ

  • 木工家のアイデンティティを確認し、誇りをもって生きるための学びの会
  • 作品の使い手から必要とされる本当に良い作品を作り、使い手に届けるため学びの会
  • 木工家の社会性を高め、社会認知を得て、豊かな木工家ライフの実現を目指す!

この目的を実現するために、以下のことを行います。

Woodworker's Meetingで取り組むこと

  • 誰もが発表者になり
  • (成功失敗に関わらず)自分の経験をシェアする
  • 作り手だけではなく、木に関するすべてのジャンルの参加者
  • 共に食べる、飲む、語る、学ぶ、泊まることで親近感が増幅させ、気軽な意見交換を促す
  • 一年に一度、それぞれの活動を認識しあう

夕飯の支度からスタートし、そのままパーティーへ

Woodworker's Meeting 2019 木工家 吉野崇裕 島崎信 平井健太

堅苦しい勉強会ではなく、まずはフランクに食事会をしよう(←吉野さんのこだわり!)、ということで、金曜日の夕方にみんなあつまり、受付をすましたら、早速調理室で夕飯の準備から始まりました。主催者の狙い通り、この辺りから「はじめましての人」がいても、ぎこちなくもコミュニケーションが始まりました。そして、それぞれが自分のできることを分担しながら、協力し合って準備を進めたことによって、主体的にこの会に参加しているという意識が生まれたのは事実です。

パーティーが始まることには、場がだいぶ温まっていました。

総勢30名以上。木工以外からも参加者

ちなみに、今回のWoodworker's Meetingには、木工家はもちろんのこと、木工家ではない方たちも参加されていました。
神戸で六甲山や街路樹などの地域材の流通にとりくむシェアウッズの山崎さん、三重の銘木屋ではなく迷木屋で希少木材の宝庫である武田製材の武田さん(こちらに武田さんの紹介記事あります)、ほかにもグリーンウッドワークを始めたばかりの一般女性、京都で地域課題に取り組む京都スマートシティ推進協議会の方などなど。

さらには、武蔵野美術大学名誉教授であり、北欧デザインや椅子研究の第一人者である島崎信先生も最初から最後まで参加いただけました。

木工家も関東、東海、関西からたくさんの方があつまり、途中参加もあり、途中で抜けるのもありで、総勢30名以上だったでしょうか。僕にとっては、関東方面の木工家の方たちとはなかなか交流する機会がありませんでしたので、今回の会はとても有意義でした。

パーティー開始!

そして、準備が完了し、さっそく乾杯!

Woodworker's Meeting 2019 木工家 吉野崇裕 島崎信 平井健太

自己紹介もしながら、いろんな話題で盛り上がる場。

Woodworker's Meeting 2019 木工家 吉野崇裕 島崎信

今回参加者には自作の椅子を持ってくるようにアナウンスされており、会場にはたくさんの椅子が並びました。それぞれの椅子について語り合ったり、それぞれの椅子に座って輪になったり。

おいしい食事とお酒をいただきながら、どんな仕事をしているのか、どんなものを作っているのか、どんなことを考えているのか、いろんなところでいろんな話題が盛り上がり、途中の温泉タイムを挟み、初日から夜遅くまで話をすることになりました。

Woodworker's Meeting 2019 木工家 吉野崇裕 島崎信 平井健太

(ちなみに、宿泊は校舎内、車中泊、テント泊を選べます。僕は車中泊で、車の中で寝袋で寝ました^^)

情報のインプットからいかに落とし込み、アクションにつなげれるかが問われる

2日目は、終日講義です。

Woodworker's Meeting 2019 木工家 吉野崇裕 島崎信

まずは主催者である吉野さんから、この会の目的や課題意識、これから木工家という人たちとどんな方向を目指していきたいのか、たくさんの思いとこれからのアクションをお話しいただきました。

モノをつくり売るというだけの仕事は今の世の中なかなか成り立ちません。木工家はその成り立ちからどうしても自己完結型の傾向がありますが、今の時代、モノをつくり売るという仕事も含め、その周辺を仕組みとして作っていく必要があります。そのためにどんなことを考えなければならないのか、どんなことを実践していかないとダメなのか。海外へ積極的に展開している吉野さんならではの説得力あるお話でした。

伝える努力の必要性と行動に落とし込む重要性

その後、特別講演ということで、島崎先生のお話を聞きました。

デザインには、ビッグデザインとスモールデザインがあり、形・色の世界だけのスモールデザインではなく、目的を達成するための仕組みづくり=ビッグデザインをしなければいけない。そして、自分自身の人生をデザインできているか?と投げかけられました。

今は、木工家だけで物事が完結することはなく、むしろより良いものを作っていくためには、異業種の人たちとも積極的に関わり、水平の関係の中で仕事をする必要がある。

さらに、情報があふれかえる世の中、自分自身の言葉・文字で伝える努力をとにかく怠らないように、とおっしゃいました。それは、自分のエゴを相手に押し付けるのではなく、お客さんと同じ目線で、丁寧に説明をする姿勢が求められるわけです。

最後に、「良い話を聞いた」で終わらず、アクションにつなげる重要性についてお話されました。そこで聞いた話を理解し、落とし込んで、実際の行動につなげる。それがなければ時間の無駄であり、なにも進歩はないのです。

このあたりは、木工家の話というよりも、生き方に通づるところで、島崎先生は「未来に通用する生き方」という本を書いておられます。

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地域材活用の事例とデジタルツールの活用事例紹介

午後は、デジタルツール、特にCNCの活用事例として、組立て式のCNCを導入したBy Handsの芦田さんやCNCや3Dスキャナを使ってデジタルツールでしか成しえないデジタルとアナログを融合したプロダクト開発に取り組む川崎さんの話を聞きました。
個人木工家でも導入しやすくなったデジタル機械を使ってどんなことが可能になるのか、その先駆者として体験をシェアしていただけたことはとても勉強になりました。

そのあと、六甲山の木材を地域で活用する仕組みづくりをしているシェアウッズの山崎さんや飯能で地域材を活用し、授産施設で家具をつくるプロジェクトや三富(さんとめ)材を活用するプロジェクトを行う高村クラフト工房の高村さんの事例紹介がありました。

地域材活用は、僕自身のミッションでもあり、それぞれの事例はとても参考になりました。山崎さんのシェアウッズはちょうど先週もお会いして話を聞いたばかりですし、高村さんの事例のひとつであるOBUSUMA家具は、5年ほど前からウォッチしていたプロジェクトだったこともあり、興味深すぎました。そして高村さんにお会いできたことはとてもうれしかったです。

そして、この2日目の夜も、ご飯の準備からパーティー、そして日付が変わったことも忘れるぐらい話し込み、実に深く、面白い時間でした。

グリーンウッドワーク体験も!

Woodworker's Meeting 2019 木工家 吉野崇裕 島崎信 平井健太

さて最終日の3日目は、まずグリーンウッドワーク体験をしました。

グリーンウッドワークは、ものをつくる楽しさを伝えるのに最適だということで、参加者みんなで、丸太を割り、削る体験をしました。

僕も久々にグリーンウッドワークをやりましたが、改めてその楽しさを実感できました。

グリーンウッドワークは、シェアウッズの山崎さんは街路樹と相性がいいとおっしゃっていました。武田製材の武田さんは山の林業ではなく、これからは都市林業の時代でもあるから、ますますグリーンウッドワークは盛り上がっていくでしょう。

ちょうどグリーンウッドワークの普及活動を積極的に展開されている岐阜県立森林文化アカデミーの久津輪さんが日本で初めて解説本を出版されたばかりです。

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まとめ:木工家を子どもが憧れる職業にできるか

グリーンウッドワーク体験の後、最後のまとめとして、参加者一人一人が今回のWoodworker's Meetingを経て、どんなことに取り組むのかをシェアしました。

この会の目的である、木工家という仕事の社会認知の向上は、木工家ウィークNAGOYAの実行委員長を務める僕にとっても常に頭にある課題であり、今回のWoodworker's Meetingのような場は、本当に望んでいたものでした。社会認知向上、または社会ステータスの向上は、わかりやすく言えば、「子どもが憧れる職業にする」ということです。かっこいいよね!っていってもらえるかどうか。

どの業界でもそうですが、稼げないから、もうからないから、苦労するからといって子どもに他の職業を勧めるのは、つらいことです。社会に貢献し、世間一般的に、木工家という仕事を知ってもらい、その価値を向上させる。今は、いろんなことが可能な時代です。島崎先生は、いつも今は本当にいい時代だ。チャンスにあふれていると勇気づけてくれます。

僕が掲げる2つのミッションと今回参加してやらなきゃ!って思ったこと

僕自身、ミッションとして掲げているのは、2つあります。

ひとつは、地域材流通の仕組みづくりです。これについては、ずっと動いてきているところもあり、またブログで書きたいと思いますが、地域材活用でネックになる製材・乾燥をいかにクリアできるか、ツバキラボで実験を始めます。
もうひとつは、Woodworker's Meetingのミッションでもある、木工家のステータス向上です。そのために実際取り組んでいるのが、ツバキラボというシェア工房の仕組みなのです。一般の人にとってものづくりを身近にすることで、プロである木工家の人たちの仕事の価値を認識してもらえるようにしたいのです。

また、よりオープンに、フラットに議論できる場として木工家や木に関わる人たちだけのSNSの立ち上げも動いています。Facebookでは情報が蓄積されないし、メーリングリストでは一方通行になってしまいます。ですので、情報も蓄積され、双方向にコミュニケーションが可能な木工家のためのSNSを作りたいと思っています。

そして、今回参加して強く思ったのが、自分の作品作りをしっかりやっていきたい、ということでした。ここ1年、新ブランド立ち上げで試作に取り組んでいるのですが、なかなか納得いくものができずくすぶっているわけです。早く発表したい。。。そして、ウッドターナーとしても作品づくりを継続していかないといけない!と皆さんの制作意欲に感化されたわけです。

今回、主催された吉野さん、事務局をしてくださった高村さん、おいしい食事を提供してくださった芦田さん、素敵な会場を提供してくださった平井さん、そして参加されたみなさん、本当にありがとうございました!

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