木工 生き方

木工家 吉野崇裕氏が4000坪の森を開拓して切り開く日本の木工業界の新たな世界

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吉野崇裕 Tak Yoshino 河口湖 木工家

Woodworker's Meeting2019で大きく感銘を受けた後、八ヶ岳を少しドライブしながら向かったのは、Woodworker's Meeting主催者である木工家 吉野崇裕氏の本拠地 河口湖。

事前に「Woodworker's Meetingが終わった日に吉野さんのところに泊めてください」とずうずうしく申し出ていたのですが、こんな若造の身勝手なお願いを快諾していただきました。本当にありがとうございます。

Woodworker's Meetingの参加者も吉野さんの工房の見学がしたいということで7人ほどで河口湖へ向かいました。

そして、工房はもちろん、さらには4000坪の森を開拓して進めている壮大なプロジェクトを目の当たりすることになるのです。これは日本の木工界、いや世界のなかでも稀なものづくりの本髄を見て体験できる場所になるところです。

河口湖を望む絶好の場所にある吉野さんの工房 木夢

吉野崇裕 Tak Yoshino 河口湖 木工家

さて河口湖についた我々は、河口湖を眺望できる大石公園に停まりました。観光客でにぎわう公園で、トイレ休憩かなと思いましたが、なんとそのとなりに吉野さんの工房がありました。河口湖を一望できるこの一等地に工房が。場所からしてすでに異次元です。

吉野崇裕 Tak Yoshino 河口湖 木工家

中はまずショールームががあり、吉野さんの作品がずらりと並んでいました。特に吉野崇裕と言えば”Zen Chair”。骨盤をしっかりサポートして、椅子に座るだけで正しい姿勢に矯正される独自の椅子。これがほんとに座っていて気持ちが良いのです。

吉野崇裕 Tak Yoshino 河口湖 木工家

そして、20代のころの作品もいくつか見せていただきました。その細かいディテールまで精緻に加工され、これが20代の頃のものか。。。とため息がもれます。20代は、とにかく一級の技術を身に着けることに無心になったとのこと。

その後、奥の作業場から、材料庫、そして2階の元居住スペースに一時保管してある大量の椅子コレクションを案内していただきました。

木工家 吉野崇裕氏とは

そもそも吉野崇裕氏とはどんな方なのか。

現在はZen(禅) Chairで有名な椅子を中心とした木工作家ですが、品川の職業訓練校で木工を学んだ後、林二郎氏に師事し、その後須田賢司氏の仕事を手伝い、技術を磨きます。特に初期は木工芸の分野で作品づくりをしており、この時期に小鉋などを自由自在に扱える技術を習得したそうです。それから、86年に独立し、88年には現在の河口湖に工房を移し、もっと暮らしの中で使われるものを、ということで椅子の制作に取り組むようになっていきました。奥様の病気を機に座禅と出会い、カンナの技術を遺憾なく発揮し、2002年にZen Chairが完成していたそうです。

吉野崇裕 Tak Yoshino 河口湖 木工家

そして、国内だけでなく海外でもより多くの人にこのZen Chairを知ってもらいたいということで、2007年から積極的に海外へ挑戦するようになります。ハワイウッドショーでグランプリを受賞するなど、海外で高く評価され、アメリカのFurniture Society(家具学会)やオーストラリア国立芸術大学などで講演や実演をするなどそのご活躍は幅広くなってきています。

その海外での経験をもとに、もっと日本も互いに学び合っていこう!と先日のWoodworker's Meetingを主催されるようになっていったのです。

僕が初めて吉野さんと出会ったのは、2012年、吉野さんがトークイベントを開かれたときでした。自身の海外での活動をお話されるということで、これは聞きにいかなきゃ!と東京へいったのを覚えています。それ以後、木工家ウィークなどでもお世話になり、そして今回のWoodworker's Meetingにつながったわけです。

4000坪の森を開拓してできる世界で随一のチェアライブラリーと木工シェア工房

そして、2,3年ほど前から吉野さんが自ら木を伐採して、森を開拓しているという噂を聞くようになります。その真相が2018年の木工家ウィークNAGOYAで登壇した際にその構想が公に明かされました。

最初は大径広葉樹の枯渇に危機感を覚え、仕事を引退するまでには使った分を植林しようとの思いで森作りを始めたそうです。

そして、上でも書いたように、アメリカのFurniture Societyでは、参加する人たちが自分の技術や経験などを発表し、互いに学び合う文化が根付いています。日本の「技術は教えてもらうものではなく、盗んで覚えるもの」という考え方とは真逆です。そのオープンな学びの場を日本でも作っていきたい!そう決意され、その森で、木を伐り、切り開いたその場所に、椅子のコレクションを所蔵するチェアライブラリーと木工家が互いに学び合えるシェア工房を建設するというものでした。

事が大きすぎて、なかなか想像がつかなかったのですが、今回ついに、その場所を訪れることができました。

吉野崇裕 Tak Yoshino 河口湖 木工家

現在切り開かれたその場所には、子どもたちと夏休みの工作(工作レベルではないが)でつくったツリーハウスがあり、その下には羊たちが飼われています。

吉野崇裕 Tak Yoshino 河口湖 木工家

吉野崇裕 Tak Yoshino 河口湖 木工家

羊を飼う暮らし、想像できません。

吉野崇裕 Tak Yoshino 河口湖 木工家

そのそばには製材機であるWood-Mizerが設置されており、ここで伐倒した木を自ら製材しているようです。

吉野崇裕 Tak Yoshino 河口湖 木工家

そこから少し進むと広葉樹の森になり、その一部が切り開かれ、造成された場所に、チェアライブラリーとカフェ、そしてシェア工房が建設されるとのことでした。

吉野崇裕 Tak Yoshino 河口湖 木工家

吉野崇裕 Tak Yoshino 河口湖 木工家

Wood-Mizerで製材された柱材などは敷地の北側に桟積みされ、その出番をじっと待っていました。

この規模のことを個人で実践されている、という事実にとても驚かされます。椅子のコレクションは、島崎信先生を筆頭に、各地のコレクターから500脚ほど集まっているそうです。吉野さんの熱意、そしてこの構想のためにと、続々と集まってきたそうで、以前のお住まいである工房の2階3階の住居部分や現在のお住まいの奥の部屋や外のコンテナなどすごい数です。それが一堂に並び、自由にじっくり見ることができるようになる、ということなのでそれはそれはすごいこと。まさに世界的に見てもすごく稀な場所になることでしょう。

こうしてこれまたオープンにその構想と場所を案内していただき、改めて吉野さんは、木工でどちらかといえば森側の人間ですが、海のような広さ深さをもった方だなぁと感銘を受けました。

その夜もご家族を含め、遅くまでお話をさせていただきました。

Wood-Mizer初体験!

さて翌日、なんと急きょ簡易製材機Wood-Mizerを体験させてもらえることになりました。

吉野崇裕 Tak Yoshino 河口湖 木工家

ユンボで登場する吉野さん。

吉野崇裕 Tak Yoshino 河口湖 木工家

ユンボを操作して丸太を設置します。

吉野崇裕 Tak Yoshino 河口湖 木工家

バンドソーは意外と細いんですね。

吉野崇裕 Tak Yoshino 河口湖 木工家

エンジン式で、厚み調整などはハンドルを回して設定します。野外でガンガン使うことを想定して設計されているので、こういうアナログなところがいいですね。下手にコンピューターが入っているとすぐダメになってしまいそうです。

吉野崇裕 Tak Yoshino 河口湖 木工家

そして柱材1本を挽かせていただきました。この柱もどこかで使われることになるのかな。

僕自身、こういうタイプの製材機は今後国内でもどんどん普及していくものだと思っており、特に地域材を地域で活用する仕組みにはなくてはならないものなので、このタイミングで実際体験できたのは非常にありがたかったです。

日本の木工の新しい潮流

吉野崇裕 Tak Yoshino 河口湖 木工家

吉野さんのこうした学び合う場を作りたい、という取り組みは、現在国内各所で盛り上がりを見せています。木工家第一世代であり、木工家ウィークNAGOYAをずっと牽引してくださっている谷進一郎さんが主宰する「信州木工会研究会」「木工家養成塾」、木工芸において人間国宝の須田賢司さんが主催する「木工藝研究会」、豪華寝台列車「ななつ星」に採用された椅子などをデザイン制作される迎山直樹さんがおこなう「チェア キャンプ」など。今回は、吉野さんが「Woodworker's Meeting」を開催しました。

そして、来年あたりには吉野さんの本拠地である河口湖にチェアライブラリーとシェア工房ができるという流れのなか、木工家として活躍する方たちがより学び合える場所、機会はどんどん増えていくでしょう。くしくも、または必然なのか、第一線で活躍されている方たちが、このような学びの場を創出してくれています。

こうした場所から学んだことを、暮らし手の方たちにより良い暮らしのあり方を提示していき、木と共に暮らす文化を伝えていかなければいけません。それは決して木工家の独りよがりになってはだめなところで、つねに意識してこれからの仕事に取り組んでいかなければいけないと感じました。

吉野さん、今回は、本当にありがとうございました。

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