北海道旅行、秋岡芳夫ファンとしてどうしても行きたい場所がありました。
それは、置戸町。
秋岡芳夫さんがたずさわった地域おこし・産業おこしの事例として岩手県大野村(現 洋野町)の「大野木工/おおのキャンパス」と並び北海道 置戸町も「オケクラフト」という名で全国的に知られています。職人養成の教育機関もあり、町をあげて木工芸を推進しているところです。
さらにこの置戸町には「秋岡コレクション」と呼ばれる、生前秋岡芳夫さんが収集した6500点ともいわれる様々な大工道具・木工工具が寄贈されていることでも知られています。工業化社会のなかで失われゆく日本の木工技術を後世に伝えるために道具収集をしていた秋岡芳夫さん。訪れた人が、それらに触れて、使って、感じる、または貸し出すこともできる図書館のような機能を夢見て、こういた教育の在り方に熱心に取り組んでいた置戸町にそのコレクションを寄贈したそうです。
現在、それらは常設展示はできておりませんが、年に1度企画展として「どま工房」にて展示をされています。
今回、北海道に行く際、ちょうどこの企画展が始まったタイミングだったので、行くことにしました。(ただ一番残念だったのは、置戸町に行く日が水曜日で、オケクラフトセンター森林工芸館が定休日だったことです。。。)
秋岡芳夫と置戸町。オケクラフトとどま工房
秋岡芳夫さんと置戸町の関係は、1983年に置戸町のイベントに彼が講師として招かれたことから始まります。
これは彼の経歴の中でどのようなタイミングかというと、50年代から工業デザイナーとして大活躍し、しかし工業化社会に対し危機感を覚え69年に一線を離れ「立ち止まった工業デザイナー」として「消費者から愛用者になろう」と呼びかけ、71年にはグループモノ・モノを始め、ものともの、ものと人との関係を異業種の人間があつまり考え、78年には「一人一芸の村」構想を掲げ、80年に冬の出稼ぎ労働者が多かった岩手県大野村で地場産業を育成するために職人養成のための取り組みを始め、実績を出しつつあったことろです。
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置戸町は木の文化における社会教育に熱心に取り組んできた町
置戸町は、林業のまちとして栄えてきましたが、衰退し過疎化が始まっているタイミングでした。一方で社会教育にかなりの力を注いできており、暮らしの中に木の文化を取り入れ、地域の暮らし、文化、人づくり、産業起こしを総合的に行うまちづくりを検討していました。
地域の木材から生まれるオケクラフト
そんなタイミングで置戸町に招待され講演を行った秋岡芳夫さんが、木工ろくろの導入し北国から新たな生活文化を発信していくことを提案したことから始まったのです。
岩手県大野でも指導をされていた時松辰夫さんが置戸町に入り、その指導のもとエゾマツやトドマツ、白樺など地域の素材を生かした美しい器などが開発され、オケクラフトと名付けられて広まっていきます。
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コミュニティの核として、どま工房
秋岡さんは、この置戸町がもともと熱心に取り組んでいた生涯教育、生産教育があるからこそ、この町でなら工芸村構想がうまくいくとして、その中心に「どま工房」を設立する計画を立てます。どまは元来、人が集い、情報や知恵の交換の場として、コミュニケーションの場として機能していることから、この名前になったようです。どま工房は1994年に完成し、いまでもオケクラフトのなかで秋岡芳夫さんの魂を伝える場所として機能しています。
企画展「ドマしよう。-あそんでならってあじわって」
秋岡芳夫さんが寄贈した6500点にもなる道具たち。これらを整理し、展示するにはまだまだ時間がかかりそうです。しかし、年に1度秋に、企画展としてそのコレクションをさまざまな切り口で展示しています。
今年は、秋岡芳夫さんが生誕100周年という年で、秋岡さんと置戸町の関わりを振り返る内容の展示となっており、初めて置戸町に行く僕としてはうれしい内容でした。
その中でも、圧巻だった(というか初めて見ることができてうれしかった)のが秋岡さんが数多く作った「竹とんぼ」のコレクションです。
様々なタイプの竹とんぼが展示されていて、そのひとつひとつが羽のかたちや角度が違い、さらにはカラフルに彩られ、見ていて飽きません。
たくさん展示されている竹とんぼ。
子どもたちも竹とんぼで遊ばせてもらい、大はしゃぎ!
一方で、道具の展示や
どま工房の名前やロゴを細かく考えられていたことをうかがえる資料など見ごたえたっぷりでした。
ニマをつくるワークショップも開催されるそうです。
企画展 ドマしよう。-あそんでならってあじわって
- 2020年10月10日~11月23日(月火休館・祝日はOPEN)
- 10:00~16:00
- 場所:置戸町どま工房
- ワークショップ:11月8日(日)、22日(日) 13:00~16:00
長い時間案内していただいたどま工房研究員の那珂さん、ありがとうございました!
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