日本と同じように、漆の文化がミャンマーにもあります。そして、その漆芸の一大生産拠点がバガンです。僕も17年前、ミャンマーの土産としてバガンの漆のフクロウの置物を買いました。日本の漆芸と違い、ミャンマーはとても繊細でカラフルな模様を施すのが特徴です。
素地となるのは木だけでなく、竹を巻いたもの、竹を編んだもの、竹と馬の尻尾の毛を編んだものなどさまざまです。トレーや箱などはミャンマーチーク、お椀や花瓶などは竹をまいたもの、コップなどは竹を編んだものでできています。日本の漆では乾くと固くなってしまうのでこのような編み物で柔らかいものには塗ることはできません。ミャンマーの漆は粘りが強く、柔らかいものに塗っても弾力性があって木地にしっかりついていくので剥がれることがありません。そういった漆の特質もミャンマーの漆芸の面白さにつながっていると思います。
オールドバガンの南にあるミィンカバー村には漆工房が無数にあり、今回そのいくつかを訪ねてみました。どこの工房も観光客向けに工程の説明をしてくれます。
漆そのものは、ミャンマー北東部に位置するシャン州が産地とされています。僕も17年前行ったことがありますが、シャン州は冷涼な気候でもあり、日本人からするととても居心地の良い場所です。またそこに住むシャン族は日本人にどこか似た雰囲気をもつ民族で、ミャンマー語がうまくなると、たいていシャン州出身かと間違われることもあるようです。
その漆の不純物を漉して、純粋な漆にします。素地は上にも書いたようにいろいろあるのですが、竹を細工し、まいたり編んだりするのは男性の仕事のようです。
竹は日本の竹と違い細いのですが、肉厚がとても分厚い。
こうやって出来上がった素地は何度か漆が塗られ、表面を滑らかにするため刃物で削られ、サンドペーパーで磨かれ美しい形に整えられていきます。それまで、言ってしまえば汚い作業場で作業ができて、塗ったもの、削ったものなどは無造作に積み上げられていきますが、最終的な塗りを施す際はさすがにきれいで清潔な場所で行うようです。日本では漆といえばほこり一つも許されない環境で、精神を統一させてその作業に向かうようなイメージがありますが、ミャンマーではそうではないようです。
そして、ここからがさらにミャンマーの漆芸の特徴的なところですが、きれいに仕上げた漆製品にあえて傷をつけていきます。その傷の部分にカラフルな色の粉末を固定して模様にしていきます。赤、緑、黄色という順番で色を乗せていくという説明をしていました。それ以外にも金箔を施したり、最近では卵の殻や銅線なども装飾として取り入れています。そういう意味では、日本にない漆の作品になるのでとても興味深いです。
たくさんある漆工房の中から3つ行ってみました。
今回訪れたのはGolden Cuckooという一番の老舗の漆工房と観光客に人気のMya Thit Sar、そしてニューバガンの新しい漆工房Bagan Houseです。
Golden Cuckooはどちらかというとファミリー経営の工房のような感じで、表の建物は安物の漆製品が並べられていますが、奥の建物にちゃんと値の張るものが置かれていました。職人さんたちの作業も自由に見させてもらえます。
Mya Thit Sarはミィンカバー村のMain Rd.に面していることもあり、ひっきりなしに観光客が訪れるお店兼工房です。1階の奥と2階が職人さんたちの作業場となっていて、ここでも自由に見学が可能です。またグループ客にはミャンマーの漆芸のレクチャーも行っています。作品のバラエティは見た中で一番豊富だったように思います。
Bagan Houseは、ミンガラー村ではなくニューバガンにあるのですが、たぶん新しいところだと思います。敷地内は非常にきれいに構成されており、どちらかというと観光客向けの施設のような印象ですが、その分「見せる」ことに力が入っており、お客さんに一人解説員の女の子がついてくれ、一通り展示物や職人さんたちの作業もしっかり解説してくれます。
しかし、説明内容も限られていて、深く突っ込んで質問しても答えられないことが多々ありました。セリフのように同じことを答え、しかも訛りのつよい英語なので聞き取るのも一苦労です。
ショールームなどもあり、リビングルーム、ベッドルームなど部屋ごとの漆製品の活用の仕方を展示しているので、とても好印象です。最後はしっかりショップに案内されて、お買い物していってくださいね、と念を押されます。しかし、他の工房がとにかく大量の漆製品が所狭しと積み重ねられているのとは違い、ここのショップはしっかりディスプレイされているので買い物はしやすいです。
結局僕は漆製品を結構買ったのですが、Bagan HouseとMya Thit Sarの2つのお店で購入しました。どこのお店も値段交渉が可能ですし、カードも使えるので気軽に買えていいと思いました。
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