目次

みなさん、こんにちは。
会社を経営していると、「パーパス」「ビジョン」「ミッション」「バリュー」といった言葉に、いやというほど出会います。最近では「パーパス経営」という言葉もすっかり定着しました。
でも、正直この言葉たちの違いってよく分かりませんよね。
「パーパスとミッションって何が違うの?」「ビジョンとどう区別するの?」と聞かれても、はっきり答えられない。本やネットで調べても、書いてあることが微妙にバラバラで、かえって混乱する。そんな状態が長く続いていました。
そんな僕の頭をスッキリ整理してくれたのが、ジム・コリンズの『ビジョナリー・カンパニーZERO』という本でした。今日は、この本を紹介しながら、僕なりにパーパス・ビジョン・ミッションの違いを整理してみたいと思います。そして、ツバキラボがこの9年でたどり着いた「言葉」も、あわせて紹介させてください。
なぜ言葉の定義に悩むのか
そもそも、なぜこんなに混乱するのか。
理由はシンプルで、人によって、本によって、これらの言葉の使い方がバラバラだからです。ある本では「ミッション」と呼んでいるものを、別の本では「パーパス」と呼んでいたりする。コンサルタントによっても定義が違う。だから、いくつもの情報源を見比べるほど、わけが分からなくなっていくんですね。
そもそも「パーパス経営」とは何か
よく耳にする「パーパス経営」。ひとことで言えば、「自社は何のために存在するのか」という根本的な問い(=パーパス)を経営の中心に据えて、会社を動かしていく考え方です。
これまでの経営は、「いくら売上を上げるか」「どう競合に勝つか」といった、利益や競争を軸に語られることが多くありました。もちろんそれも大事です。でも、それだけだと、何のために働いているのかが見えなくなり、社員も顧客も離れていってしまう。
そこで「儲けるため」の前に、「自分たちは社会に対して、何のために存在しているのか」という存在意義(パーパス)を明確にし、それを判断やブランディング、人材の採用・育成の軸に置く。これがパーパス経営です。
なぜ今これが注目されているのか。背景には、ものやサービスが溢れて機能だけでは差がつきにくくなったこと、働く人や消費者が「共感できる会社か」を重視するようになったことがあります。「何を売るか」より「なぜやるか」が問われる時代になった、ということですね。
ただ、ここで多くの人がつまずきます。「パーパスが大事なのは分かった。でも、パーパスってミッションやビジョンと何が違うの?」と。
一人のときから、言葉は掲げていた
実は僕は、独立した2017年ごろから「パーパス」を意識していました。これからはパーパスを定義する時代なんだと考え、まだ社員が一人もいない頃から、「何のために存在しているのか」「どこを目指すのか」を言葉にして、ウェブサイトにも掲げていました。
この、ちゃんと言葉にして掲げることは、本当に大事だと思います。たった一人で会社を回していても、迷いはたくさん出てきます。そんなとき、立ち返る指針として、この言葉はしっかり機能してくれました。
ところが、一人、二人と仲間が増えるにつれて、新しい不安が生まれてきました。「このパーパスは、ちゃんと全員に共有できているんだろうか」「いや、そもそもパーパスだけでいいのか。ミッションやバリューといった、別の何かも必要なんじゃないか」——。
掲げた言葉が増え、調べれば調べるほど、それぞれの違いが分からなくなる。こうして僕は、冒頭で書いたあのもやもやに、すっぽりはまり込んでしまったのです。
ビジョナリー・カンパニーZEROという本
そこで出会ったのが、『ビジョナリー・カンパニーZERO』でした。
この本は、世界的なベストセラー『ビジョナリー・カンパニー』シリーズの原点ともいえる一冊です。著者のジム・コリンズが、起業初期のスタートアップに向けて、偉大な企業をつくるための土台となる考え方をまとめています。「ZERO」というタイトルのとおり、会社を始める「ゼロ」の段階から読むべき内容で、まさに僕のような小さな会社の経営者にこそ刺さる本でした。
僕はこの本を、バイブルのように何度も読み返しています。書籍としてデスクに置き、KindleでもAudibleでも購入し、いつでもどこでもこの本に触れられるようにするほどです。
この本の中で、コリンズは会社の土台となる要素を明快に整理しています。それが、僕の頭の中のもやもやを晴らしてくれました。僕なりの理解で、その整理を紹介します。
パーパス・ビジョン・ミッション・バリューの違い
コリンズの考え方を僕なりにかみ砕くと、こうなります。
パーパス(Purpose)= 存在意義。なぜこの会社が存在するのか。何のために事業をやっているのか。これは、達成して終わるものではなく、永遠に追い求め続ける北極星のようなものです。100年経っても変わらない、会社の根っこにある理由。これがパーパスです。
ミッション(Mission)= 果たすべき使命・目標。パーパスという終わりのない方向性に対して、ミッションは「向こう10年で登るべき具体的な山」のようなものです。コリンズはこれを「BHAG(ビーハグ=社運を賭けた大胆な目標)」という言葉で表現しています。明確で、ワクワクして、達成したかどうかが分かる。それがミッションです。
ビジョン(Vision)= 目指す未来の姿。ミッションを達成したとき、世界や会社はどうなっているのか。その情景を描いたものがビジョンです。
バリュー(Core Values)= 大切にする価値観。何を判断基準にするのか。どんなときも譲らない、行動のものさし。これがバリューです。

整理すると、こういう関係になります。
バリュー(何を大切にするか)を根っこに、パーパス(なぜ存在するか)という幹が立ち、その先にミッション(何を成すか)とビジョン(どんな未来か)という枝葉が広がっていく。
特に大事だと感じたのは、パーパスとバリューは「変わらないもの」、ミッションとビジョンは「時代に合わせて更新していくもの」だという区別です。根っこと幹は変えない。でも、枝葉は伸ばし方を変えていい。この感覚をつかんでから、僕は自社の言葉を見直すことができました。
ツバキラボのパーパスを、10年目に再定義した
ここからは、僕の会社の実例です。
ツバキラボは創業以来、「地域資源を活用し、人々の暮らしを豊かにする」というパーパスを掲げてやってきました。この言葉に嘘はないし、9年間ずっと指針にしてきました。
でも、10年目を迎えるにあたって、僕はこの言葉を見つめ直しました。9年やってきて見えてきたもの、これから本当に大切にしたいこと。それをもっと自分たちの言葉で、解像度高く表現したい。そう思ったんです。
そうして再定義したのが、こちらのパーパスです。
木のものづくりを通して、
地域資源と人の暮らしを結び直し、
地域のつながりの中で、
自然と共に生きる豊かさを育む。
「地域資源を活用する」という以前の言葉から、「結び直す」という言葉に変えたところに、思いを込めました。森と人、技術と暮らし、伝統と未来。一度バラバラになってしまったこれらを、木のものづくりを通じてもう一度つなぎ直す。それがツバキラボの存在意義だと、今は考えています。
パーパスそのものを捨てたわけではありません。根っこは同じです。でも、9年の経験を経て、その根っこをより深く、より自分たちらしい言葉で掘り下げた。これは、まさにコリンズの言う「パーパスは変わらないが、表現は磨いていける」という感覚そのものでした。
コアバリューは「挑戦・創造・希望」
ツバキラボのコアバリューは不変です。
挑戦・創造・希望
常に挑戦し続けること。価値を創造すること。そして未来に希望を持つこと。この3つを、社員全員で共有する価値観として掲げています。判断に迷ったとき、「これは挑戦になっているか」「価値を創造できているか」「希望につながるか」と問い直す。そんな行動のものさしです。
そして、これらすべてを束ねるコピーが、こちらです。
手を動かしてものをつくるという行為は、自分の生き方そのものを形づくることに似ている。木を削り、磨き、仕上げるように、人生も社会も、一つひとつの選択でつくっていく。「つくることは、生きること」。この思いを、短い言葉に込めました。
これらをまとめて、僕たちは「ツバキラボ Vision & Values 2026」として一冊に整理しました。言葉にして、形にして、仲間と共有する。これが、次の10年に向けた僕たちの軸です。
小さな会社こそ、言葉を定め、掲げる。それがパーパス経営の始まり。
ここまで書いてきて、改めて思うことがあります。
それは、小さな会社こそ、こうした言葉の策定がとても重要だということです。
大企業なら、立派な仕組みやブランドが社員を引っ張ってくれるかもしれません。でも、10人ほどの小さな会社では、仕組みよりもまず「何のために、どこを目指して、何を大切にやっているのか」という共通の言葉が、全員を同じ方向に向かわせてくれます。この軸がないと、日々の忙しさの中で、会社はあっという間にぶれていく。僕自身、それを痛感してきました。
もちろん、立派な言葉を掲げただけでは意味がありません。大事なのは、その言葉を日々の判断や行動に落とし込んでいくこと。掲げて終わりではなく、使い続けること。ここからが本番だと思っています。それがパーパス経営の第一歩だと思います。
パーパス、ビジョン、ミッション、バリュー。言葉の定義に惑わされていた僕が、『ビジョナリー・カンパニーZERO』に出会って頭を整理し、自社の言葉を再定義するまで、9年かかりました。もし今、同じように言葉の違いに悩んでいる経営者の方がいたら、この本を手に取ってみることを、おすすめします。

