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木工家の時代を考える

2017年6月3日

木工 仕事 経営

実行委員を務めさせていただいている木工家ウィークNAGOYAが金曜日から始まりました。昨夜は毎年定番サブイベント「木工家の集い」が行われ、大御所から若手職人から世代を超えて大盛り上がりでした。

木工家ウィークは6月4日まで名古屋各地で様々な企画展が行われていますので、ぜひ会場に足を運んでくださるとうれしいです。

さて、今年の木工家ウィークは10周年です。毎年メイン企画としてフォーラムがありますが、その節目の年の今年のフォーラムのタイトルが

「木工家の時代を考える」

です。

木工を生業とする人にとってはとても深いテーマなんですね。そして、数十年前、木工家を名乗り仕事を始めた第1世代の方たち4名が登壇し、話が展開される予定です。その大先輩方4名は、木工家ウィークの公式サイトに「木工家の時代を考える」というタイトルでそれぞれコラムを掲載しました。
今夜(6月3日)開催されますので、大変楽しみです。

しかしながら、その話を聞いて感想をここに書いてもあまり意味がないと思います。フォーラムの内容に影響されてしまうからです。ここで一つ自分が思う「木工家」というものを書いてみたいと思います。

木工家とはなにか、という議論

そもそも、「木工家」とはなにか、という議論があります。木工作家は作家なのでアーティスト。木工職人は職人なのでそのまま職人。では木工家とは?

世間一般では木工家といういい方はあまり馴染みがないようです。歴史的にみても木工には芸術と職人の世界があり、そのあいのこのような立ち位置はそれこそ第1世代といわれる人たちが最初なのだと思います。

正直なところ、木工家の間で繰り広げられるこの「木工家とはなにか」という議論や自分が第何世代かということは全く意味を持たないと、僕は思っています。

木工は思想であり、生き方である

以前、杉の間伐材から植木鉢(Timber Pot)をつくる福井県鯖江のろくろ舎 酒井さんにお話を伺った際、酒井さんは「木工は思想だ」とおっしゃいました。

当時、木工を思想と表現することに強い衝撃を受けたのですが、よくよく考えてみると、僕にとっても木工は生き方そのものであり、あらゆる考えの根源に「自然と向き合い、木という自然の産物を扱い暮らしを築いていく」というものがあります。それは仕事以前に自分らしく生きるための根底的なものです。

僕は、海外での生活経験もあり、大企業での勤務経験もあります。その先に選んだ職が「木工」であったのは今の時代を生きる人間として辿り着いた生き方なんだと思っています。自分の人生を搾取されたくない、人間らしく生きたいという思いが木工の道に進ませました。

木工は衰退産業

しかし、思想だ、生き方だ、といっても現実というものもあります。インテリア業界としてみればまだ市場は大きいですが、木工産業は衰退産業の一つです。それが個人レベルになればなるほど状況は厳しくなります。

製造小売業の体制を築くニトリ、IKEAがインテリア業界で成長しているのはそういう時代だからであり、お客さんがもとめているものを求めているやり方で提供しているからです。それに対して、木工家がつくる家具を求める人はものすごく割合は小さくなります。確実にいるはいますが、その小さなパイを大勢の木工家たちが奪い合うわけです。

以前、森林たくみ塾の先輩のある著名な木工作家にお話を伺ったところ、いずれ淘汰される時代がくる、とおっしゃっていました。木工家が多いのです。しかし、そのうち中途半端なものは淘汰されていくだろう、ということでした。

木工家ウィークの会場を見てまわっても、たくさんの木工家が作品を並べています。お客さんは何を見て、何を選んでいくのだろうと毎回考えさせられます。

これからの木工家として

僕は、作家ではありません。木工家です。

木工家は生き方として、思想であるかどうか、です。

デザインの良いオシャレなものをつくる、技術の高い家具をつくる、ということではないです。もっと奥深いところの話です。

そして、その考えを家具、道具ををとおしてどのように伝えていくのか。自分が持てる、提供できる価値がなんなのか、というところは追求していく必要があります。いくらデザインの良いテーブル、イス、キャビネット、雑貨を並べたところでお客さんには選んでいただけない時代だからです。

それをいかにビジネスとして成り立たせるのか。

今回僕が独立してシェア工房を始めるのは、僕なりの木工家としての挑戦です。他の人が絶対やらない、やれないこと、僕だからできる木と人との付き合い方を試していきたいと思っています。

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